20日(土)を宵宮、21日(日)を本祭に行われる燕市宮町、戸隠神社(星野和彦宮司)春季例大祭で、木場小路万灯組と横町万灯組の2団体による万灯が行われ、呼び物の女の子による舞も披露される。
木場小路万灯組は14日、横町万灯組は15日から毎晩、全体でのけいこを行っており、ケンオー・ドットコム16日夜、参加者を募ってけいこの見学を行い、10人が参加した。
昨年初めて万灯の本番を見学した、三線を弾いて歌う三条市の「きよ里」さんがけいこのようすや感想をリポートした。
三条祭りの興奮も冷めやらぬ5月16日、燕戸隠神社春季例大祭の通称「萬燈(まんどう)」のおけいこを見学に行ってきました。
昨年、初めて燕のお祭りを見て、三条祭りとは勢いも形式もまったく違う隣市のお祭りに強く興味を抱いたのでした。祭りといえば天狗さまの大名行列しか知らぬ私が、30代も後半になってやっと、町ごとの文化の違いを見比べるという楽しみを知ったのでした。
まず「まんどう」は「萬燈」なのか、「萬灯」なのか、「万灯」なのか。いろいろな表記がありますが、今日いただいたパンフや木場小路萬燈組のWebサイトに習い「萬燈」が正式で、他はそのまま略字と捉えることにします。
19時、サンロード宮町に位置する戸隠神社に集合。スマートな宮司さんより、戸隠神社の来歴などについてお話をうかがう。「400年ほど前に祠がこの地に流れ着いたのがはじめと言われている。川の流れから考えると100%あり得ないが、『人間の初めは天からおりてきた神様』としているあたりと合わせ、そういうところが人間のロマン」という印象的な説明で楽しく教えていただきました。説明の中で本成寺の萬燈行列にもふれていただいたのが、嵐南っ子的にテンション上がった。
主催者のケンオー・ドットコム佐藤さんに「よっちゃん」と呼ばれている小林由明さんのご案内で、お社の裏にある「宿」と呼ばれる萬燈の練習場へ移動。
前半は木場小路萬燈組の見学。宿の雰囲気はどことなくピリっとしていて、踏み込むのがためらわれる雰囲気だ。こちらの踊り手さんの呼称は「お玉さん」。小学生の女子が12人、色とりどりの浴衣に、三尺帯を前結びして、白足袋で2列の隊列を組む。
その後ろで「ひょっとこ」役の男児が、美しい所作で扇をひらめかせている。その動きの格調高さに目が引きつけられた。さらに先輩と思しき少年が、ひょっとこ君に扇の使い方をアドバイスしている。
太鼓は2台、踊り手でない小児が耳をふさぐほどの音量。後ろ姿しか見えないが、男性の背筋が躍動しているのが表情豊か。
日本舞踊東流のお師匠さんが鋭い眼差しで見守る中、カチ(拍子木)の音を合図に少女たちが舞い始める。唄い手は若き総代さん。いわゆる民謡のプロ的な発声でないところに味がある。「普段は普通の人」が普通の生活でしないことをするところに祭りの楽しみはある。
「勇猛さのある男踊り」との説明があったが、やはりお玉さんの動きは可憐で繊細でいとおしい。ひとつひとつの振りが男らしいのではなく、全体の隊列と振りの乱れのなさが、厳しさと格調高さを感じさせる。
お師匠さんの指示はかなり怖い!「下を向かない!」「ここだよ。まだ。まだ待って。」最も若いお玉さんは6歳だろうか、体の大きさは随分違う少女たちが一糸乱れぬ舞を見せてくれた。
続いてもう一つの萬燈組、横町萬燈組の宿へ徒歩で移動。保険会社の駐車場にござを敷いて宿とし、お神酒と灰皿が並ぶ雰囲気は先の組と比べ全体的にオープン。前年度総代の我らがエレキギター・エーサクさんが、祭りの男「英作」の顔をして色紙のこよりを作っている。普段と違って話しかけづらい。
説明によると、横町萬燈組の総代は1年交代で一度、総代を経験した人は二度とはなれないそうだ。よく続くな。人材が豊富ですばらしい。木場小路の総代には任期がなく、10年くらい同じ人が務めることもあるそうだ。
太鼓は大小合わせ4台がしなやかな動きで奏でられる。踊り手を卒業した中学生から大学生くらいの女性たちが主に笛を担当しているようだ。
カチが鳴ると横町の踊り手、「おどり子さん」が縦1列にずらりと並ぶ。「横若」と染め抜いた揃いの浴衣がいやがうえにも祭りの雰囲気を盛り上げる。帯は後ろ結び。
拡声器に乗せて良い声の伊勢音頭が流れる。お神酒が回ってくる。歌詞が全然、違うし、振り付けもまったく違う。共通のところはあるが、「優しげな女踊り」という説明のとおり、手の動きが小ぶりで、しとやかな印象。
厳格なお師匠さんの姿はなく、聞けば、宿に集まる前に花柳流のお稽古場で全員が稽古をつけてもらってから集まるのだそうだ。踊り子さんたちはどことなくのびのびした表情にも思える。袖に縫い付けられた鈴のリンリン軽やかな音が少女たちの可憐さを引き立てた。
おみやげに、おどり子さんの萌え絵をジャケットにした唄のCDをいただいて解散。
貴重な機会だった。おけいこは非公開ではないらしいが、部外者が「ちょっと見せてください」と入れるかというと、まぁそんなことはあり得ない。まずいつどこでやっているか、地元の人か、そこに知り合いがいなければわからないし、関係者に手引してもらわなければ、非公開でないと言われてもおいそれと参加できない。
直接、説明を聞くことで、地域外の人間でも当事者に近い気持ちを持って祭りに参加することができる。歓迎されている空気を感じながら本番を楽しむことができる気がした。
欲を言えば案内役は木場小路、横町の両方から出てきていただきたかったなぁ〜、そうしたらより深いお話が聞けたのではないかな。
これは完全に私的な意見ですが、三条もんとしては、燕の行事にはうっすらライバル心が、どうしても否定できない。燕に敵愾心(てきがいしん)なんかまったくないのに、自分自身だって三条祭りに参加してないのに(毎年見には行くけど)、なんとなくこう、比べてみて、ぼんやりと嫉妬(しっと)したりしてしまう。燕は大好きなのに、ちいせえ器でごめんなさい。
昨年も感じたことだが、何が妬ましいって、萬燈はメンバーが若い。20〜40代の第一線の人たちがちゃんと主体的に取り仕切ってやっている。これにはライバルとして嫉妬を覚えざるを得ない。すごくいいと思う。
ことしの萬燈本番は、5月21日(日)。午前8時から午後8時のクライマックスの舞い込みまで、サンロード宮町周辺で踊りの披露と萬燈が練り歩くシーンを見ることができる。
「燕の祭りは宵宮が盛り上がる」と言われている前夜祭は5月20日(土)、午後4時から10時だそうな。できればどちらも行きたいな!
三条の人も燕の人も、みんなで楽しみましょう。せっかく三条祭りと萬燈の日にちが分かれた暦の年ですから、三条祭りのご関係者の方にもぜひ楽しんでいただきたいものです!