燕市と弥彦村は31日、水道事業の統合に向けた協議に関する覚書を交わし、さっそく第1回の燕市・弥彦村水道事業統合協議会を開いて2025年度の統合浄水場供用開始に向け、統合団体による2020年度の水道事業開始を想定した取り組みを始めた。
燕市役所で覚書の締結式を行い、燕市の鈴木力市長と弥彦村の小林豊彦村長が覚書に署名。引き続き鈴木市長を座長に両市村の担当者をはじめ、県福祉保健部生活衛生課もオブザーバーとなって協議会を開いた。
燕市の水道事業は、平成の大合併前の旧3市町の浄水場を料金体系も合併前のまま運用してきたが、それぞれ建設から50年前後たち、老朽化が著しいため、25年度の供用開始に向けて笈ヶ島地内での新浄水場の建設計画を検討するとともに、段階的に料金体形の一本化を進めている。
一方、弥彦村が燕市内で西川から取水している弥彦浄水場は、燕市内3つの浄水場よりさらに古く、1961年(昭和36)の建設で築56年。同様に老朽化により近い将来、浄水場の改修に迫られていた。
浄水場の更新にかかる費用は、燕市約176億円、弥彦村約15億円。弥彦村の人口は燕市のほぼ10分の1なので、浄水場の施設規模に大きな影響はないとみられる。水道事業は独立採算なので、その費用は水道料金でまかなわければならないが、広域化して共同整備することで事業費の1/3の国庫補助を受けることができ、建設コストを削減できる。ほかにも人材や技術力の確保、水道サービス水準の向上などのメリットがある。
小林村長が2015年2月に村長に就任して鈴木市長にあいさつに訪れたときに、鈴木市長は水道事業の広域連携を小林村長に求めた。16年4月に燕市・弥彦村水道事業広域化研究会を設置し、建設コストの削減などを見込んで両市村で協議を始めることになった。
協議会では、水道事業広域化の基本計画の策定や、経営の主体を新たに一部事務組合を設立するか、あるいはすでにある燕・弥彦総合事務組合で経営するかなどを検討していく。
住民にとっての現実的な関心事は水道料金がどうなうるか。鈴木市長は、燕市の水道料金は「弥彦より低い水準」で、「高い方に合わせるのは住民はなかなか納得しないと思うので、いい着地点を」と住民の負担が増えないようにする考えを示した。
現行の弥彦村の水道料金は、メーター口径の違いにかかわらず一定、燕の新しい水道料金はメーター口径によって基本料金が異なる。燕市で最も多い口径20mmのメーターで4人家族世帯を想定した月20m3の水道料金で比較すると、燕市の税込み3,510円に対し、弥彦村は3,402円とわずかに弥彦村が安い。しかし、弥彦村では口径13mmのメーターが7、8割を占めるとされ、口径13mmで比較すると弥彦村は変わらないが、燕市は3,186円となる。
また、弥彦村では使用水量が多いほど割高になる料金体系をとっており、燕市の水道料金にあわせれば弥彦村民の多くは水道料金が安くなり、とくに使用水量が多い世帯ほど安くなる。
平成の大合併以降、更新も含めて自治体が水道事業を統合するのは県内ではこれが初めて。県央地域では旧三条市、加茂市、旧栄町、田上町、旧下田村の5市町村が1975年に三条地域水道用水供給企業団を設立し、96年に供用開始している。ただ、三条地域水道用水供給企業団が行うのは水道用水供給事業で、燕市と弥彦村は末端給水事業まで進める 。末端給水事業は一般家庭等の蛇口に水道水を供給する事業で、いわば小売業。用水供給事業は末端給水事業者に浄水処理した水道用水を供給する事業で卸売業といえる。
また、燕市の新しい水道料金は国庫補助を前提とせずに算出した。新浄水場建設のための積み立ても考慮して算出しただけに、国庫補助が決まれば水道料金の引き下げも考えられるが、市では浄水場の老朽化と同様に水道管の老朽化も深刻になっていることから、国庫補助で負担が軽減された分は水道料金の引き下げより水道管の更新に充てたい考えだ。
いずれにしろ燕市は4年ごとに水道料金の見直しを検討することになっている。