三条鍛冶道場の鍛冶体験の入門コースと初級コースの修了生が自主的に中級コースを受けたいとつくった組織「三条鍛冶道場中級コース実行委員会」が17、18日の2日間、三条鍛冶道場で中級コースを開き、参加した16人は越後三条鍛冶集団師範の指導で包丁やかま、はさみなどオリジナルの鍛冶製品を完成させた。
三条鍛冶道場では、越後三条鍛冶集団の指導で切り出しを作る体験教室を開設している。入門と初級の2コースあり、入門コースでは、鋼が付けてある材料に焼き入れや研ぎを施して切り出しを製作。入門コースを修了すると初級コースに進むことができ、鍛冶作業では最もダイナミックな工程の鋼付けから鍛冶の技を体験できる。
初級コースは4年、5年と続けてる参加する人も多い。年々、応募者が増えて抽選を行うようになり、希望しても参加できるとは限らない。そこで修了生有志で実行委員会を組織して2008年から毎年、中級コースを開き、自分の作りたい刃物を作っている。今回でちょうど10回目になった。
実行委員会のメンバーは、40歳代から80歳代の男性20人、女性2人の22人。県内は1人だけで、ほかは関東を中心に愛知県や滋賀県、山形県などに住む。今回はうち16人が参加した。
事前に参加者から作りたい刃物を聞き、越後三条鍛冶集団の専門家が指導に当たった。今回の指導者は、いずれも伝統工芸士の師範6人の豪華な顔ぶれだ。名称こそ「中級」だが、入門コースを受けてから15年以上になるベテランの参加者も目立ち、師範のアドバイスを受けて慣れた手つきで作業した。
実行委員会事務局の神奈川県大和市に住む秋山嘉男さん(80)は、山でボランティア活動を行っている。中級コース設立から最初の5年はなた、その後の5年ははかまを作っている。かまは自分で使ったり、ボランティア仲間に使ってもらったりしている。
「最初は大事にしまいこんでいる人もいるが、道具は使わなければだめ」と秋山さん。秋山さんはすぐに試し使いし、刃こぼれしたらひとりで鍛冶道場に来て作り直すこともある。
師範がいなくても、鍛冶道場のスタッフも元鍛冶職人なので鍛冶について詳しく、いつでも安心して利用させてもらえるのは、ほかの産地にはない三条鍛冶道場の魅力と話した。
栃木県に住む龍野宗男さん(73)は、2001年に入門コースを受講してから毎年、参加して菜切包丁や刺身包丁を製作した。自作の包丁で料理教室に通っている。今回はうどんを切る麺切包丁に挑戦した。龍野さんは「作るのは楽しいが、そのあとの宴会がもっと楽しい」と、三条鍛冶集団の師範や各地から集まるメンバーとの交流が大きな楽しみと話していた。
また、今回は「中級コース」開設10年の節目を記念して、初日夜に記念式も開いた。