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2017年6月23日夜、新潟県西蒲原郡弥彦村の弥彦公園の小川が流れるもみじ谷で、ホタルが乱舞した。ホタルの観賞や写真撮影にと切れ目なく見物客が訪れ、自然が生み出す幻想的な夏を告げる風物詩を楽しんでいた。
弥彦でホタルを楽しめるのも、ホタルの再生に取り組んだ「やひこホタルの会」の人たちの献身的な活動があったからこそ。しかし会が昨年で解散するという活動の継続に危機的な状況を迎えたが、弥彦観光協会が取り組みのバトンを受け取り、ホタル再生の取り組みは新たな組織で再出発した。
“絶滅状態だった弥彦のホタルの再生へ”
かつてはいたるところでホタルが飛び交い、珍しくもなかった。それが農薬によるホタルの幼虫のえさとなる川にすむ巻貝、カワニナの減少などが原因で激減した。もみじ谷も例外ではなかった。ひところはほぼ絶滅状態だった。
ホタルが舞った昔のもみじ谷を取り戻そうと、20年以上前に地元の有志で「やひこホタルの会」を発足した。もみじに谷にホタルのメスを放ったり、小川に石灰石をまいたりと試行錯誤した。
カワニナを増やすことがポイントとわかり、カワニナの飼育に挑んだがうまくいかなかった。結局、村内のカワニナがたくさんいる場所で捕獲し、もみじ谷に放つという手法にたどり着いた。しかし、カワニナもたくさん捕りすぎると環境が変わっていなくなってしまうので、村内数カ所を毎年、場所を変えて捕獲している。
“やひこホタルの会が解散、弥彦観光協会が継承”
あわせてもみじ谷のホタルをPRし、弥彦を盛り上げて行こうと1995年から毎年、JR弥彦駅前をメーン会場にホタルの飛翔シーズンにあわせて「やひこホタルまつり」を開いた。順調に取り組みは続いたが、しだいに会員が高齢化して活動の継続が難しくなってきた。
ホタル祭りもイベントはにぎわうものの、イベントを楽しむだけでホタルを観賞せずに帰る人も多く、本来の趣旨とは離れていった。手間も経費もかかり、2014年を最後に終わった。「やひこホタルの会」も会員の高齢化のため、昨年のカワニナの捕獲を最後の事業に解散した。
弥彦のホタル再生の取り組みもこれで終止符かと思われたが、そこで立ち上がったのが、弥彦観光協会まちづくり部会、愛称「よって会」だ。2010年から部会長に就く株式会社河村組常務取締役の河村恒二さん(41)は、「やめるという話を聞いた。何とも悲しい話。非常に意義のある営利目的ではない仕事です。何とかして受け継ぎますよと」申し出た。
まずは保存の手法を継承しなければならない。村内でホタルが飛び始めた6月15日、やひこホタルの会の会員だった3人と河村さんや観光協会メンバーの合わせて6人で軽トラに乗ってカワニナの捕獲に向かった。
ホタルの再生に取り組んでいるほかの地域にならって、棒の先にA4判ほどの金属の枠があり、さらに金網が付いたカワニナの捕獲専用に自作した道具を使い、用水路のコンクリートの壁にくっついたカワニナをこそぎ落とすようにして捕った。
カワニナは殻長3セントほどで黒っぽい。あっと言う間にバケツ1杯以上のカワニナが捕れ、そのままもみじ谷へ運び、小川の中へ投げ入れた。このカワニナはこの夏に飛ぶホタルのためのえさではない。ホタルの飛翔後に川に産卵し、ふ化した幼虫のえさになる。
“若手を育てられなかった” “地道な活動を続けたい”
やひこホタルの会の発足時の副会長で、解散するときの会長だった弥生商店の羽生信二さん(74)も参加し、カワニナを捕獲する場所や手順を河村さんに指導した。羽生さんは「お祭りだけ、いっぱい人が集まってくれるんだけど、育成のときに集まってくれね。年寄りばっかではだめら。若手を育てらんねかった、おらがわーれんだけど」と反省もある。
河村さんは「ホタルがすみ続けられるようにしなければ。そうすれば自然と人も集まってくるようになる」と言い、「あまり派手にせず、地道な活動を続けていきたい」と話している。弥彦のホタル再生の取り組みは、確実に引き継がれて第2章がスタートした。
弥彦温泉観光旅館組合では、2017年も7月上旬まで恒例の「ほたる観賞ミニバスツアー」を行っている。弥彦温泉の宿泊者を対象におとなひとり100円の環境保護寄付金でホタル観賞に向かうというもので、午後7時50分に四季の宿みのや前、7時55分に弥彦駅前、8時に上州苑坂下を出発し、9時に戻る。参加したい人は午後5時までに各宿泊施設のフロントに申し込む。