25日行われた三条市の水害対応総合防災訓練では、市内の中学生180人がボランティアとして参加し、地域との交流しながら避難所設営の手伝いなどにあたった。7.13水害で被災した嵐南地区の第一中学校避難所では、「まずは、自分の命がいちばん大切なんだよ。その次にだれかを助けられるような人になってほしい」と地域からの願いも寄せられた。
次代を担う中学生の防災意識を育み、地域の防災力を高めようと、ことし初めて中学生が参加した。中学生ボランティアモデル校の第一、第二、第三、第四、大島、栄の6中学校を対象にボランティアを募り、合わせて180人が参加。各中学校区の避難所で設営や避難者の受け付け、炊き出しの手伝いなどを行った。
2004年の7.13水害では、地域の多くが水に浸かり大きな被害を受けた嵐南地区にある第一中学校では、97人が参加。第一中学校・嵐南小学校、ものづくり拠点施設、三条高校の3カ所の避難所で活動した。
同地区の第1次避難所のひとつ、第一中学校・嵐南小学校では、地元の南四日町1・2丁目自治会約150人と第一中学校の生徒79人の計約230人が訓練に参加した。
第一中学校生徒の参加は、昨年に続いて2回目。同校は昨年、自治会との話のなかで、「せっかくの地域の大切な行事、生徒もボランティアで参加させてもらえたら」と理解を示し、休日に学校などで練習を行っている部活動を主体として参加した。
今回の訓練では、自治会は、情報伝達、「避難準備・高齢者等避難開始」の発令で車イスや担架を持って災害時要援護者の支援に向かう人、炊き出しをする人、避難所に避難する人たちなど、それぞれが自分の役割を果たすように活動した。中学生は、「避難勧告」発令と同時に、部活動をしていた生徒などが身の危険がないことを確認したうえで多目的ホールに集まり、同自治会の指示を受けて、炊き出しや受け付けなど避難所の運営を手伝った。
避難所の体育館に避難した人たちに、声をかけるのも中学生ボランティアに任せられた仕事だった。避難してくる人というのは、心配で、不安で、心細い。その気持ちを少しでも和らげるため、「大変でしたね」、「大丈夫ですか」と声をかけてほしいというものだった。
さらに、同自治会では、この訓練が、中学生と地域がつながるきっかけになればという思いがあった。7.13水害は中学1年生が生まれた年に起きたので当時の記憶はないが、ここに避難してきた人のほとんどは水害体験者。それぞれの水害体験を中学生に話すことも、あわせて行った。
避難所の体育館では、避難して来た多くの住民が、水害当時の恐怖や大変だったこと、周辺のようすなどそれぞれの体験を話し、中学生は正座をして真剣な表情で聞いていた。
同自治会会長の上石貞夫さん(84)は、「いつどこで災害が起こるかわからない時代のなかで、まずは、自分の命がいちばん大切なんだよということ。その次にだれかを助けられるような人になってほしい」と中学生に伝えられたらと言い、以前から、地域の一員として参加してもらえたらと考えていた。
上石さん自身も水害を体験し「日ごろからの人と人との付き合いが大切だと実感した」、「地域の支え合い活動は、地元でしかできない」と話す。2004年7月13日は、「真っ暗な中で、私と家内の2人だけで、2晩(家に)いた。寂しかったこと、寂しかったこと」、「隣近所と仲良くしておけば…」。
また、「(当時の)高橋一夫市長がFMラジオの放送で『早く避難してください』と言うのを聞いていた」。「なに言うてんだ?、未曽有のことが起きる?」、「その言葉の意味がわからんかった」と、自宅にとどまった。その後、濁流が押し寄せた。
上石さんは、水害を教訓に、水害後まもなく地域の老人会「南四日町1・2丁目熟年いこいの会」をつくり、さまざまな活動を通じて地域のつきあいをつなげている。