三条市の吉田実副市長(69)が20日、任期満了で退任した。2期8年間を勤め終え、職員や市議らに拍手で送られて市庁舎を後にした。
午前9時半から市役所三条庁舎で退任式が行われ、国定勇人市長が感謝の言葉を述べ、120人余りの職員を前に吉田副市長が最後のあいさつを行なった。
吉田副市長は「皆さんから本当に支えていただき心から感謝を申し上げます。ありがとうございました」と感謝し、「三条の財政も気を緩めれば、また、事業も簡単に進めようとすると、たちまち財政に響いてくると肝に命じてほしい」と、最後の言葉を贈った。
任期満了直前の豪雨災害についてふれ、「私も理事者のひとりとしてみなさんに多くの仕事をお願いして参りましたが、まさか防災の関係で最後の最後まで、朝早くから仕事をするとは思っておりませんでした」と災害対応を振り返り、「ブラック企業という言葉があるが、ブラック気象そのもの」と、涙をふく職員もいるなか、いつものジョークで笑いを誘った。
また、「在職中、心ならずも大きな声を出したことが多々ありましたが、みなさんを本心から怒ったことは一度もありませんでした。優秀な職員になっていただきたい、育っていただきたい、さすがは三条市の職員だと思われるような職員になっっていただきたい、その一念で声を荒らげたこともありました」と明かした。
これからの三条市は多くのプロジェクトが控え、そのために多額な財政が必要になるが、今の三条市の財政はそれに耐えうる体力は十分と思っている。しかし、農家の人はわかると思うが、庭にこぼれたコメを拾うときは、石が混じらないように一粒一粒、拾い集める。しかし、こぼれるときは簡単にこぼれる。一瞬で地面にこぼれる。三条の財政も、気を緩めれば、事業も簡単に進めようとすると、たちまち財政に響いてくると肝に命じてほしいと求めた。
最後に、「三条市の輝かしい成長、活力ある三条市の建設のために皆さまがたの尽力を願ってやみません。本当にありがとうございました」と深く頭を下げ、締めくくった。
退任式の最初にあいさつした国定市長は、すでに涙目で演壇に立ち、冒頭で深いため息をついた。「吉田副市長、いよいよこの日がやってきてしまいました」、「三条市政発展のため長きにわたって身を捧げてこられた吉田副市長の行政マンとして公務員として迎える最後の日のけじめとして、私自身の正直な気持ちを吐露させてください」と話して振り返った。
市長が三条市職員として赴任した2003年4月1日、人事異動辞令交付式に隣に座ったというの出会いから話した。7・13水害では、災害対策本部員として駆けつけた当時の合併事務局長だった吉田副市長が、この日も隣り合わせた。混乱に陥っていく対策本部で絶えず市民目線に立ち、鬼の形相、獅子奮迅の働きのようすに圧倒され、公務員とは何かとわかっているつもりであった自分の器の小ささが恥ずかしくなった。
さらに東日本大震災、7.29水害、通常の議会対応から平常時における対応などについて話し、「なんの懸念もなく副市長に身を委ねることができました。副市長の気持ちを忖度することなく、こうしたことを許していただける副市長と仕事ができて、私は市長として、国定勇人個人として幸せでした」と話した。
何度も言葉を詰まらせたあいさつの最後に「吉田副市長、本当に本当にありがとうございました」と、感謝の気持ちを伝えた。退任式の後、大勢の職員が拍手で見送るなかで車に乗り込み、職員時代から44年を過ごした市役所を後にした。