JR燕三条駅に降り立つと聞こえるチャルメラの音。それが「かん哲」の立ち食い塩ラーメン。透き通ったスープにふさわしいすっきりした味わいのなかにもうまみがあふれ、地元にとどまらずラーメン好きの間でもじわじわと評判が広がっている。
営業場所はJR燕三条駅の燕口を出てすぐ左に歩いて道路を渡ったところ。三条市須頃1、「味覚天国たまや」の駐車場に止まるスカイブルーのワンボックスカーがそれだ。
水曜と木曜の週2日だけ、午後7時から営業する。1日50食目安でスープがなくなりしだい閉店するが、おおむね午後10時ころまでの営業。メニューは塩ラーメン(700円)とそのチャーシュー麺(850円)だけ。鶏がらベースとシイタケや煮干しの和風だしのダブルスープで、試行錯誤を繰り返して天然塩など3種類の塩をブレンドする。
麺はオリジナルの細麺で、ゆで上がりは速いのに、のびにくいのが特徴。チャーシューには新潟県産ブランド豚「甘豚」をじっくり煮込んで口の中でとろけるように仕上げた。燕三条駅周辺には居酒屋が多い。酒を飲んだあとの締めのラーメンのイメージで腹にもたれない、あっさり感にこだわった。
店主は三条市では有名なアイデアマン関本秀次郎さん(43)。市内の日本料理店の二男に生まれ、店で修行したあと市内で2011年に「酒場カンテツ」をオープンし、13年からミニシアターカフェ「キネマ・カンテツ座」を営んでいる。自ら三条名物とうたったサバ缶とタマネギを生かした「サバサラ」、コメが主体のコロッケ「カンテツコロッケ」などのユニークなメニューを考案してメディアの注目も集める。
全国に知られる燕三条の背脂ラーメンが大好きだ。キッチンカーも所有し、いつかは立ち食いラーメンをとの夢があったが、背脂ラーメンは「愛しすぎて作れない。その土俵には踏み入れたくなかった」と関本さん。さっと食べてさっと帰るには、塩ラーメンだと考えた。半年かけてようやく納得できる味に仕上がり、6月から営業している。
「味覚天国たまや」の店主とは顔なじみで、ダメ元で相談したら快く駐車場を貸してくれた。週末は「味覚天国たまや」がにぎわって駐車場も不足するので、水、木曜だけの営業に。逆に立ち食いラーメンを味わいながら「味覚天国たまや」の酒を注文することもできる。
スピーカーでチャルメラを流しているので、その音を聞きつけて食べにくる燕三条への出張客も多く、関本さんは「リピーターも増えているのを実感できてうれしい」と言う。地元燕三条地域の客は7割ほど。この塩ラーメンが食べたいと県内各地からラーメン好きも訪れる。
幼稚園のバザーなどに出店依頼を受けることもあり、ケータリングにも対応する。「地元の会社から出張ラーメンをやってくれと言われたらおもしろい」と、関本さんはいろいろな構想を練っている。塩ラーメンはキネマ・カンテツ座のメニューにはなく、立ち食いラーメンだけ。