東京大学名誉教授で工学博士の月尾嘉男氏が31日、三条市・二洲楼で開かれた三条市国際交流協会(高波久雄会長)の平成29年度定時総会に伴う記念講演会で「幸福実感社会への転進」をテーマに講演した。
月尾氏は1942年、愛知県名古屋市生まれ。2002年に大学からは初めて総務省総務審議官に就任した。デザイン分野でのコンピュータ応用の草分け。人工知能や仮想現実の建築設計や都市計画の応用を研究し、幅広いフィールドで活躍している。数多くの著書があり、テレビやラジオに出演することも多い。
三条市国際交流協会は毎年、定時総会にあわせて記念講演会を開いている。昨年度、三条市下田地区で開講した滞在型職業訓練施設「しただ塾」で月尾氏は2度、講師を務めた。その縁で今回の月尾氏による講演会が実現した。
月尾氏は、日本人の幸福度の低さ、矛盾する分配、格差拡大などさまざまな指標を示し、「経済的に豊かになったということが幸福ということではない」、「不公平感が、全体が豊かになっているので自分は不幸だと思っている根源」とした。
ブータンの先代のジグミ・シンゲ国王が提唱した、GNP(国民総生産)より重要なGNH(国民総幸福量)や「欲望は人間が受領する情報量に比例する」といった言葉を紹介。そのうえでテーマに沿って幸福への挑戦として「中央集権から地域主導へ」、「進歩主義から伝統主義」といったキーワードを導き、日本の伝統である縮小文化への回帰などに期待した。
まるでテレビ番組を見ているかのように簡潔にわかりやすい言葉で話す月尾氏の講演はすっと頭の中に入り、聴講した協会会員の約120人はじっくりと耳を傾けていた。