洋画家有元利夫の版画のコレクションを弥彦で展示 (2017.11.15)

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安井賞に輝き将来を期待されながら38歳の若さで死去した洋画家、有元利夫(1946-85)の版画作品のコレクションを展示した「有元利夫版画の世界−中村玄コレクション展−」が12月17日(日)まで弥彦村の弥彦の丘美術館で開かれている。

「有元利夫版画の世界−中村玄コレクション展−」会場
「有元利夫版画の世界−中村玄コレクション展−」会場

30年前から有元利夫作品を集める新潟市西区・中村玄さんのコレクションを借りた。大半が有元利夫の版画集として出版された版画。リトグラフや銅版画で制作され、有元利夫が手掛けた金属製のブローチを含め44点を展示している。

有元利夫は岡山県津山市に生まれ、生後3カ月で東京谷中へ移り、そこで生涯を暮らした。4年間の浪人生活を送って1969年(昭和44)に念願の東京芸大デザイン科に入学。卒業すると電通に入社して商業デザイナーとして勤務したがわずか3年ほどで辞め、創作に没頭した。

田鎖大志郎横浜国大名誉教授とともに制作した銅版画集『7つの音楽』は、田鎖名誉教授が作った曲の楽譜と有元氏の作品を組み合わせている
田鎖大志郎横浜国大名誉教授とともに制作した銅版画集『7つの音楽』は、田鎖名誉教授が作った曲の楽譜と有元氏の作品を組み合わせている

絵画をはじめ版画や彫刻も手掛け、音楽にも造詣が深く自身も楽器を演奏し、友人とアンサンブルをつくる入れ込みようだった。1978年(昭和53)に安井賞特別賞、1981年(昭和56)に安井賞を受賞したが、1985年(昭和60)に肝臓がんのため38歳で死去した。

今回の企画展で有元利夫の妻で陶芸家の容子氏が寄せた文章で「日本の古いものとヨーロッパの古いものを融合させ独自の世界を作り上げること、そして彼にとっての『時間』を表現することは実に面白いことだったと思います。」と書いている。有元利夫のイメージが浮遊感や静謐(せいひつ)さとして作品に表出。画集ごとに設計された統一された世界観に引き込まれる。

有元利夫の展覧会の図録やカレンダーも展示
有元利夫の展覧会の図録やカレンダーも展示

作曲家で田鎖大志郎横浜国大名誉教授とともに制作した銅版画集『7つの音楽』は、収められた7葉の作品のなかに左に田鎖大志郎名誉教授がつくった曲の楽譜、、右に有元利夫の作品を配置。録音テープ付きで、有元利夫ならではの独創的な作品だ。

「有元利夫作品集」に収録されたリトグラフ「コケット」も展示し、中村玄さんが有元利夫の作品を収集するきっかけになった作品。参考で有元利夫の展覧会の図録や作品をデザインしたカレンダーの展示も行っているほか、会場では1980年(昭和55)に有元利夫が作曲し、ハープの演奏を収録してCDがリリースされた曲「ロンド」がBGMとして流れている。

関連イベントとしてコレクターの中村玄さんが23日(木・祝)と12月10日(日)、洋画家の猪爪彦一さんが12月2日(土)ギャラリートークを行う。さらに12月3日(日)午後2時からギャラリーコンサートを行い、渋谷陽子さんのチェロ、佐藤芳明さんのアコーディオンで有元利夫作曲の「ロンド」などを演奏する。関連イベントはいずれも無料だが、入館料が必要。問い合わせは弥彦の丘美術館(電話:0256-94-4875)へ。

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