三条市や弥彦村を含む全編新潟県でロケが行われた映画『ミッドナイト・バス』が、27日の全国ロードショーに先駆けて20日、新潟先行ロードショーが始まった。初日は県内6館でキャストらによる舞台あいさつが行われた。
株式会社新潟日報社が140年記念事業としてと東京・ストラーダフィルムズと共同制作した。第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補となった伊吹有喜さんの小説「ミッドナイト・バス」(文春文庫)が原作。舞台あいさつはトップを切って新潟市のT・ジョイ新潟万代で行われ、主人公の夜行バス運転手の利一役を演じた原田泰造さん、利一の元妻役の山本未來さん、恋人役の小西真奈美さん、息子役の七瀬公さん、そして竹下昌男監督が登壇した。
利一の家は三条市下田地区の民家を借りて撮影し、下田地区のハクチョウの飛来地、森町の白鳥の郷公苑では原田さんと小西さんのふたりのシーンが撮影された。ほかに県央地域では弥彦神社でも撮影が行われた。
竹下監督は、企画を立ち上げて3年、撮影から1年で「いよいよ公開でトンネルを抜けて朝を迎えたという感じ」と話した。撮影を振り返って、原田さんは大型免許を取って自分で大型バスを運転したことを話し、山本さんは越後湯沢のあたりが新潟のイメージだったが「こんなにまちなんだんと最初に来たときはすごく驚いた」。小西さんはなるべくふたりの空気感がうまく出ればいいなと思って原田さんとたくさん話すように努力したこと、七瀬さんは初めての大きな役で自分にできるだろうかと心配したことなどを話した。
原田さんが「(小西さんと)しゃべるたびに思ったのが精神年齢が多分、3歳くらい」と話すと小西さんは「そんなこと思ってたんですか!。うそ!」に会場は爆笑。さらに原田さんはお金がないと言って山本さんに食事をごちそうになっていたことに「自分をかわいそうに見せるのがうまい」と笑わせた。
原作者の伊吹さんの「この作品を新潟の皆さまにとても大事にしていただき、本当にうれしく感謝の思いでいっぱいです。新潟の人のぬくもりと風土の豊かさに 魅せられて生まれたミッドナイト・バス。これからもどうぞよろしくお願いします」というコメントも紹介。竹下監督は「ぜひ皆さんで口コミで広めていただいて、新潟の盛り上がりが全国に広がればいいなと思っています」と締めくくった。
その後、燕市・イオンシネマ県央でも原田さんと竹下監督による舞台あいさつが行われた。原田さんが演じた利一の家は三条市下田地区の民家を借りて撮影したが、「自分ちみたいな感じ」と原田さん。そこでの撮影は夜の10時までの約束なのに12時ぐらいになることがあっても文句一つ言われなかったと感謝した。
竹下監督は、利一の実家は雪国独特の玄関に風除室があり、家自体で亡くなった両親の存在が出せるような家を選んだと説明。原田さんはハクチョウのシーンを撮るのに「ガンマイクを伸ばしたらそれを見たらハクチョウがみんな逃げていってハクチョウがみんないなくなったことがある」とエピソードを紹介し、ハクチョウには「びっくりした。ふつうにハクチョウがいるんだと思って。ぼくと七瀬君で、ふつうにいるねって驚いてた。あの時点で新潟、すごいなと思った」。
弥彦神社について原田さんは「なんか神聖な場所。入った瞬間にわかったんですけど、ここ、なんかすごいなと思って。撮影していいのかなって。なんか神秘的でした」と話す一方、「弥彦神社、相当、歩きました。そのシーンがごっそりない」と笑わせた。最後は「映画を見ていただくのがこんだけうれしいことだということを47年、生きてきて本当にきょう、思っている」と公開の喜びを話した。
来場した50歳代の夫婦は、原作を読んだ妻が夫を誘って鑑賞した。妻は弥彦村出身で「原作がすてきだったので見てみたいなと思って。新潟の場面がたくさんでてきて良かった」。夫は小西さんが演じる古井志穂が営む定食屋の舞台になった東京・大森に近い蒲田の出身。「今の大森、蒲田はもっと栄えているけど、裏通りの古い感じ」と懐かしく鑑賞した。