最高賞金100万円の三条市主催第2回手づくりしかけ絵本コンクールの表彰式が27日、三条市役所栄庁舎の教育センターで行われた。あわせて27日から29日まで教育センターで応募作品の作品展を開いている。
「しかけ絵本蔵書日本一」を目指した三条市の取り組みの一環のコンクールで、ことしで2年目。最高100万円の高額賞金とあって、全国から注目を集めた。応募作品は一般73点、子ども27点の2部門合わせてちょうど100点。昨年の104点をわずかに下回ったものの、北は北海道から南は宮崎県まで応募があった。
絵本作家のきむらゆういちさんが審査員長に、いしかわこうじさんらが審査員を務め、2部門とも最優秀賞1点、優秀賞と入賞を2点ずつ、加えて一般部門は、しかけ部門賞とストーリー部門賞を1点ずつ決めた。表彰式では国定勇人市長から楯と副賞として一般部門の最優秀賞に賞金100万円、優秀賞に賞金10万円のプレート、子ども部門の最優秀賞と優秀賞に図書カードを手渡した。
審査委員長のきむらゆういちさんは、ことしもレベルが高かったが、仕掛けがおもしろくてもストーリーがおもしろくなくてはだめで、最優秀賞は「総合的にいちばんいいもの」を満場一致で決めたと話した。
一般部門の最優秀賞に輝いたのは昨年、優秀賞を受けている東京都渋谷区に住む山端マリーさん(31)の作品『はじめてはなす日』。今は3歳になったマリーさんの娘が8年前から飼っていたネコと仲良くなり、言葉が話せないうちから2人が話しているように見えたことに着想を得て、赤ちゃんが人間の言葉を話す前にペットと話すことができるという設定を膨らませ、母と子の心温まるストーリーを組み立てた。
マリーさんは父がカナダ人、母が日本人のハーフでモデルの仕事も受ける。祖父が工作名人で8歳のころ、妹の誕生日に祖父に教わってしかけ絵本を作り、「なんて楽しいんだろう」と思った。その後も友だちに誕生日などに作ってプレゼントするようになった。
10年ほど前に見た海外のメッセージカードに鳥肌が立ち、涙が出てくるくらい感動した。それから本格的にしかけ絵本の勉強を始め、7年前から絵本教室にも通っている。
昨年は最優秀賞に次ぐ優秀賞という誇らしい結果だったが、「人生で2位を取ったことはなく、うれしいはずなのに初めて味わう悔しさでした」とマリーさんの心境に変化があった。「リベンジの気持ちを込めて頑張りました」。創作意欲に火が着いた。
失敗を繰り返しながら1日10時間で3カ月がかりで制作。家中が散らかって「洗濯物の山ができた」と笑い、育児も家事もおろそかになりがちだったが、夫に対しては「協力はしないけど笑って許してくれた」と感謝する。
今回の作品には「昨年よりできが良く、納得しています」と言う。最優秀署の知らせに「予想は“やったー!”でしたが、実際は良かったとほっとしました。小躍りするのではなく、もっと頑張ろうと思いました」と最優秀賞はゴールにはならなかった。
マリーさんが目指すのは、しかけ絵本作家。しかけ絵本はコストがかかり、出版が難しい。「ふつうのしかけ絵本から始めていずれはしかけ絵本を出したい」と夢の実現に向けて今回の受賞は確実に歩を進めた。
世界的なしかけ絵本作家、アメリカのロバート・サブダにあこがれ、サブダの絵本を買って解体して仕組みを調べるほど。しかし、必要以上にしかけにとらわれずに「ストーリーが心に届くのが理想」と言う。
子ども部門の最優秀賞は、東京都西東京市に住む小学校3年一ノ瀬仙太郎君(9)の『イソ太郎のぼうけん〜とびだせ!ぼくの海図かん〜』。仙太郎君も昨年は優秀賞だった。
ポップアップカードが好きで、2年ほど前から釣りに行くようになり、三浦半島や千葉、伊豆、長崎などで釣りをしたときに見た風景などを表現しており、しかけもさることながら、生き生きとしたサカナの描写がすばらしい。
仙太郎君がちいばん気に入っているのは、ページを開くときに主人公のイソ太郎がくるくると回転する仕掛け。「サブダの本を見ながら作った」と仙太郎君。次作は「内容は決まってないけど、台湾をテーマにしたものを作り、応募するんだ」と話していた。
応募作品は29日(月)まで午前10時から午後4時まで教育センターで展示されたあと、2月2日(金)から4日(日)まで毎日午前10時から午後4時まで三条市中央公民館に展示される。最優秀賞を除く受賞は次の通り。敬称略。
【一般部門】
【子ども部門】