加茂市出身で弥彦村に住む日展作家の織作家、川崎久美子さん(61)の個展「風参道−川崎久美子 織展−」が17日から3月18日まで地元の弥彦の丘美術館で開かれており、風や波をイメージした初公開の3点を含む11点のタペストリーが展示されている。
川崎さんは77年に新潟県に奉職し、31歳のときに長岡市の知的障害者総合援護施設新潟県コロニーにいがた白岩の里勤務となり、機織(はたおり)科を担当したのがきっかけで織物に魅了された。
38歳で県展に初出展するも落選し、その後は入選、落選を繰り返した。さらに高みを目指して京都造形芸術大学通信制染織コースに学び、7年かけて2006年に卒業。「波」をテーマに創作するようになり、退職した12年には県展で最高賞の県展賞に輝いた。同じ年に日展でも初入選し、以降も毎年入選。15年には県展無鑑査になった。
11年に地元弥彦村のギャラリー余韻での初個展を皮切りに、北方文化博物館屋根裏ギャラリー、ぎゃらりー浜つばき、知足美術館、アートギャラリー万代島での6回の個展を開いている。
今回、展示しているのは、日展出品作6点と県展出品作1点、今回のために制作した初公開の3点も。初日は17日は県内の美術関係者ら20人余りが出席してオープニングセレモニーを行い、川崎さんは作品解説も行った。
「風を織りたい、波を織りたい、時を織りたい」と思い続けた川崎さんの作品の多くは波や風をモチーフにしている。作品の多くが畳1枚分ほども大きな作品の中でダイナミックにうねり、崩れ落ちる波が迫ってくる。なかでも今回のために制作した197×380センチの大作「As Time Goes By」は圧巻。作品1点を作るのに3、4カ月かかるとのことで、1年がかりの労作だ。
10年の日展作品「青嵐」は完成したときに涙があふれ出たと言う。13年の日展作品「時の記憶」は、デヴィ夫人のブログで写真入りで掲載された。
川崎さんは夫婦で終の棲家をと、08年にそれまで住んでいた燕市吉田地区から弥彦村に移住した。加茂市に住んでいた子どものころ、祖母が遠く弥彦山に向かってよく手を合わせていたことを覚えている。年に一度、家族で弥彦山ロープウェイに乗るのが一大行事だった。
川崎さんにとって弥彦は特別な場所。移住してから人のつながりもあって個展が開くことができ、ご利益も感じながら「ゆったりと創作活動ができている」と言う。
今回の個展は「正直、がっかりしたんです」が川崎さんの正直な感想。弥彦の丘美術館は天井が高く、「大きい空間の中では自分の作品はまだまだだと思いました」と満足していない。「年々、体力が落ちていきますが、エネルギーをどこまで保っていけるか、ずっと織っていきたい。織機にかぶさって死ねたらいちばん」と笑った。
会期中の土曜に4回、川崎さん本人による作品解説会が開かれる。4回とも午後2時からっで、日程とテーマは24日「構図について」、3月3日「色について」、10日「技法について」、17日「私を変えた出来事」。
会期中は無休、午前9時から午後4時半まで開館、入館料は高校生以上300円、小中学生150円。問い合わせは弥彦の丘美術館(0256-94-4875)へ。