未来の生活を考える会・三条は18日、三条東公民館で「福島を考える講演会&コンサート」を開き、80人余りが来場して福島県双葉町の前町長、井戸川克隆さんの講演を聴き、ネイティブアメリカンフルート奏者マーク・アキクサさんの演奏を楽しんだ。
井戸川さんは、2005年から13年まで双葉町の町長を務めた。「ふくしまから私が 今、伝えたいこと」をテーマに、11年の東日本大震災、福島第一原発の事故発生時の県外避難などの経験を踏まえて、行政や国の対応、自身の経験や思いを話した。
井戸川さんは、東日本大震災でまったく変わってしまった自分の人生を「何もできないようになってしまいました」と表現した。ホームグラウンドがなくなり、町長として双葉町のかじ取り、計画立案、予算執行などが全部できなくなった。「この許せない事故に対して、思いも含めて説明させてもらう」と始めた。
事故後は、「福島は皆さんの意思で、皆さんの声をあげて何かを決めたことはほとんどありません。わざわざ皆さんの声を閉ざして、国が憲法に関わる生存とか財産とか全部、この事故で彼らが仕切ってきた」と不満を訴えた。
双葉郡は8町村あり、首長8人の中で井戸川さんは1対7と孤立した。容易ならぬ事故なので一緒に取り組もう、たとえば賠償問題も一緒にやろうと提案したが、「民間と民間の問題。皆さんと東電の問題だから、行政がかかわる問題ではない」という意見が出て、それを否定するのは自分だけだった。
「厳しいようですが、自分のことは自分で守ってくださいね、自学自習の中で」、「行政は何もやってくれませんから」。危機管理がしっかりしている首長がいればいいが、新潟県は福島県と違って、技術委員会があり、福島の事故を検証している。本来、福島県がやらなければならないこととで、これをしないで復興だ、風評だと言っているのは本末転倒と批判した。
三条市は、柏崎刈羽原子力発電所の風下に位置しており、事故が起こった場合には、放射能はまともに飛んできて、放射能の被爆は避けられないとし、警鐘を鳴らした。
マーク・アキクサさんのコンサートでは、オリジナル曲をはじめ、アメージンググレイスなどおなじみの曲も演奏。ネイティブアメリカンフルートは、北米先住民に伝わる木製の縦笛で、自然の優しさや厳しさ、大きさを感じさせるような優しく深い音色が会場を包んだ。
さらに、楽器や曲を紹介しながら、楽しく話すマークさんの世界に観客は引き込まれ、曲が終わるたびに大きな拍手を送っていた。