プロスノーボーダーへの登竜門とされるアマチュアの国内ナンバーワンを決める第36回全日本スノーボード選手権大会のハーフパイプが6日、新潟県南魚沼市・石打丸山スキー場のガンホーモンスターパイプで開かれた。そのうち14歳以下が対象の「ユース男子」で新潟県三条市の小学校2年生、8歳の少年が最年少優勝の快挙を成し遂げた。
優勝したのは三条市立西鱈田小学校の目の前に住む同校2年生、村上広乃輔(こうのすけ)君(8つ)。会社員村上幸二さん(39)のひとり息子だ。ユース男子には全国の予選を勝ち抜いた9人が出場した。2回の演技を行って高い方の得点で順位が決まる。
広乃輔君は2本ともバックサイドトゥイーク、フロントサイド540、バックサイド540、フロントサイド360、キャバレリアルというルーティン。2本とも転倒せず、得点は77.00点。2位の63.50点に13.5点の大差をつけての快勝だった。
最も難しいトリックはフロントサイド720を習得しているが、今回はあえてルーティンに含めず、リスクを避けて完成度で勝負した。これまでユース男子の優勝者は中学生ばかり。身長125センチ、体重24キロであどけなさが残る広乃輔君の優勝には、驚くほかない。
体が大きい方が高さが出て、得点にもプラスにつながる。新雪はが多いと小さい体では高さが出にくく、不利になる。幸二さんは優勝は難しいと思っていたが、体格のハンディを乗り越えての優勝だ。
これに先立って2月4日に岐阜県郡上市で開かれた西日本、中部、東海地区の公認チームが対象の「All West Championship」のユース男子で優勝した。全日本の予選を兼ねた大会で、昨年は6位にとどまり全日本出場を逃した。その悔しさから一段と練習に熱が入った。「小さい子ども勝てるところを見せたいと本気でサポートしてみた」と幸二さん。それが今回の結果につながったのは間違いない。
広乃輔君は幸二さんの影響で3歳からスノーボードを始め、スケートボードとあわせてみるみる腕を上げた。年長児のときから上越国際ジュニアスノーボードクラブに所属し、小学校1年になって本格的にスノーボードに向かった。
新潟県スキー連盟強化指定選手のコーチーの勧めもあり、7歳になる16年、続く17年と強化指定選手に認定された。南魚沼市を拠点に週末は昼はモンスターパイプで練習し、夜は南魚沼市トレーニングセンターでトランポリンで回転の感覚を身につけ、練習漬け。ハーフパイプのナイター施設がある上越国際スキー場で練習することもある。
練習はもちろん幸二さんと2人で出掛ける。宿泊費を節約するためにワゴン車で車中泊するのも日常。「子どもも頑張らないとだけど、一般家庭では家計のどこを切り詰めるか」と経済的負担の大きさを話す幸二さん。南魚沼市の関係者の世話になっており、広乃輔君を「大会前は家に泊めてもらったり、会場まで送迎してもらったこともある」と、感謝しかない。
自宅のガレージにはトランポリンとスケートボードのバンクを設置し、本来の目的の車を入れるスペースがなくなった。
広乃輔君はスノーボードは「くるくる回るの楽しい」と言い、今回の全日本選手権は「勝てると思った」とと自信をのぞかせ、優勝には「うれしかった」、「金メダルは重かった」。小学校の同級生からもらった応援メッセージも力になった。
アイドルはもちろん2大会連続で冬季五輪ハーフパイプで銀メダルに輝いた新潟県出身の平野歩夢選手。今回の優勝について「うれしかった」、「メダルが重かった」と照れもあって言葉は少ない一方で、戦前から「勝てると思った」と強気なのも平野歩選手ばり。夢は「冬季五輪で金メダルを取ること」。ねらうは15歳になる次の次、26年の冬季五輪だ。
今回の優勝でユース男子での出場は卒業とし、来年は一般対象のオープンクラス男子に挑む。「小学校3年になるとSAJ(公益財団法印全日本スキー連盟)の主催の全日本スキー選手権大会のスノーボードに出場できるので、学年別のクラスに出場させようと思う」と幸二さん。広乃輔君が夢を追い続ける限り幸二さんも全力でサポートしていくつもりだ。