自然豊かな三条市下田地域に住んで職業訓練を受ける三条市滞在型職業訓練施設「しただ塾」のアウトドア観光従事者養成科の閉講式が27日、しただ塾の学びやの旧荒沢小学校で行われ、4カ月の訓練を終えた7人が修了証書を手にした。
しただ塾は前年度に続く開講で、観光関連サービス業への就職や地域の観光資源を生かした起業を目指す人に、地場産業の経営者の講話や企業見学を通じて、観光のあり方を学んでもらった。昨年10月29日からことし3月27日までの4カ月コース、432時間の訓練をNPO法人ソーシャルファームさんじょう(柴山昌彦理事長)が実施した。
地元下田地域の2人を含め県内から男性6人、女性4人の10人が受講したが、残念ながら3人がリタイアし、7人が修了した。熊倉直信しただ塾会長・塾頭から一人ひとりに修了証書を手渡したあと、塾生は順に感想などを話した。
しただ塾名誉会長の国定勇人市長は「第2、第3のふるさとと思って、いつまでもこの下田の経験を大事にしていただければ」と話し、三条の有効求人倍率は直近で2.04倍にのぼり、「それだけ就職の選択肢が無限のごとく広がっている」ことから「今後の進路を考えていただければ」と地元への就職にも期待した。
ソーシャルファームさんじょうの柴山理事長は塾生一人ひとりを紹介し、「自分がこうやりたい、こうなりたいということが明確になってそれがぶれなければ必ず達成できると思うので、ぜひ自分の信念を曲げずに頑張ってもらいたい」と激励した。
修了した7人のうち3人が三条に残る。そのうちのひとり、千葉県市川市出身の末宗奈穂さん(25)は、4月から下田を拠点に活動する地域おこし協力隊となる。総務省で地方創生関係を担当する父からいろいろな話を聞いていた。その影響もあり、父のようになりたいとも思い、地域おこし協力隊には大学生のときから興味をもち、「いつかは地方で暮らしたいという思いがあった」と言う。
地方移住セミナーなどで話を聞き、30歳くらいで仕事をやめて地方へと考えていたが、しただ塾が魅力的だったこともあり、「30ぐらいっていうのが早まってこっちへ思い切って来ちゃいました」。都内で交通コンサルタントの仕事に就いていたが、しただ塾の開講の直前にやめた。「むしろ若い方が地方でできることが増えるかなと」、「5年区切りのいいタイミングだったのかと思って決意して来た」とポジティブだ。
「4カ月が楽しくて、しかも下田ってすごくいい所だな、好きだなと思ったのでこれからも残りたい」と地域おこし協力隊という道を選択した。「自分のなかでは、いいターニングポイントというか、これからの人生がすごい明るくなるかなっていう風に、ずっと都心でくすぶっているよりは、やっぱ地方に出て良かったなって思ってます」とほほえんだ。
最高齢の塾生だった新潟県湯沢町出身の松永正義さん(43)は、野外活動を専門職として生涯の仕事にしたいと会社をやめ、仕事を探しているときに、しただ塾のパンフレットを見かけて参加した。4カ月間で家族やきょうだいのように思える仲間ができた。
2月末にキャンプ・インストラクター資格を取得し、4月から長野県ある東京都新宿区の保養所で指導員として働くことになった。「自分で仕事がくるようになったら、下田、新潟が好きなので、新潟をフィールドにキャンプ・インストラクターを続けたい」と夢を語った。
しただ塾は来年度、前期と後期の2回の開講を予定している。