聖徳太子の「和の精神」の普及を図る「和プロジェクトTAISHI」は、十七条憲法制定の日の3日、全国17を超える寺院で書家による奉納揮毫(きごう)を行った。新潟県内では唯一、聖徳太子にかかわる縁起が伝わる燕市・国上寺(山田光哲住職)で加茂市の書家、下田彩水さん(35)が篠笛とのコラボレーションで揮毫した。
国上寺の方丈講堂が会場。山田住職が祈とう、読経を行ってから下田さんは縦223センチ、横118センチの大きな紙に「以和為貴」と草書で書いた。聖徳太子の言葉「和を以て貴しと為す」だ。同時に新潟市に拠点を置く日本酒を楽しむ女性コミュニティ「にいがた美醸」太鼓部酔龍に所属する新潟市秋葉区の熊倉ひとみさん(30)が、篠笛でジョン・レノノンの代表曲『イマジン』をソロで演奏。その音色を聴きながら下田さんは腰を曲げて前身を使い、大きな筆を上からつかむように握って走らせ、一気に書き上げた。
「和プロジェクトTAISHI」(宮本辰彦代表・事務局:愛知県名古屋市)は、聖徳太子ご聖忌1400年の2022年に「和の精神」が最初に明文化された十七条憲法を世界遺産に登録することを旗印に2014年にスタートした。
昨年も9月21日の「世界平和の日」に、全国47社の護国神社で世界平和を祈念した奉納イベントが行われ、下田さんは新潟県護国神社で剣舞とのコラボで奉納揮毫を行い、今回で2回目の奉納揮毫となった。
国上寺が安置する県指定文化財の千手観音像は聖徳太子が国上山を登って彫ったとする縁起があり、県内で唯一、聖徳太子とのかかわりが伝えられている。
「和プロジェクトTAISHI」から奉納揮毫の依頼を受けた下田さんは「わたしで申し訳ない気持ちもありますが、ご縁をいただいたのは光栄なこと」と感謝。「今回は“和”がポイント。和を強調して書きたくて全体のバランスを見て草書で書きました」。揮毫した作品の取り扱いは決まっていないが、「心を込めて書いたことが大事なので」と下田さんは焼納してもらうのがいちばんと話していた。
篠笛を奏でた熊倉さんは、下田さんとはこの日が初対面で、書に合わせて吹いたのも初めて。「全国的なプロジェクトの一員とさせていただいたのは光栄で、身が引き締まる思いでした」と笑顔だった。