21日に粟ヶ岳(1,293m)で行われた全長5.5km、標高差1,000mを駆け上がる速さを競う「2018スカイランニング日本選手権 粟ヶ岳バーティカルキロメーター」の女子で、燕市の会社員蓑口めぐみさん(24)が日本選手権初出場にもかかわらず3位となる快挙を成し遂げた。いきなりスカイランニングのトップ選手に仲間入りしたが、プロ選手は眼中になく、「楽しく走られれば」と欲のないスーパーアスリートだ。
1時間17分36秒でゴールした。優勝したのは昨年のワールドシリーズで3位となった世界のトップ選手、高村貴子選手。タイムは1時間11分22秒で、蓑口さんとは6分14秒差。2位の立石ゆうこ選手の1時間16分02秒には1分34秒差に迫っている。
粟ヶ岳は昨年、ふつうに登山した経験しかない。とくに粟ヶ岳バーティカルキロメーターに向けた練習も行っていない。当日は風邪気味で体調は万全ではなかった。「足が止まったときもあってきつかった」、「最後の9合目からは手を使いながら泥まみれで這い上がっている感じだった」と振り返る。
粟ヶ岳は標高が上がると雪が残っていたため、5合目でランニングストックを受け取れるレギュレーションだった。蓑口さんはランニングストックを使ったことがなく、初めてでは使いこなせずに返ってタイムを落とすだろうと使わなかった。
優勝の高村選手はもちろんランニングストックを使っており、蓑口さんもランニングストックを使いこなせるようになり、体調万全でのぞめば高村選手といい勝負を期待できる。
蓑口さんは、午前は父が経営する金属加工会社で働く。午後は燕市のトレーニングセンター「ビジョンよしだ」でプール監視員やジムの指導に当たり、夜は総合型スポーツ道場「SPORTS DOJO KAGAYAKI」で練習と指導。燕市の陸上クラブ「リトル・ウイング」の指導、コーチも務める。
新潟市・新潟第一高校にスポーツ推薦で入学し、800m、1500mの中長距離の選手に。1年生でインターハイに出場した。全国都道府県対抗駅伝に出場したこともあるが、2年生から成績は低迷した。
しかし近年の活躍は目覚ましい。地元の燕マラソン大会は4連覇中。トレイルランニングは高校の後輩に誘われて4年前に長岡市・越後丘陵公園で開かれたトレイルランニングの大会に2人1組で出場し、いきなり優勝した。
腕力が物を言う2016年に長岡市で開かれた第25回全日本丸太早切選手権大会で優勝。同じ年に新潟市・朱鷺メッセで行われたビルクライムで2位、ことし1月にメディアシップで行われたビルクライムでは優勝。ことしの三条市元旦マラソンの5kmで優勝し、招待出場した2月に三条市で開かれたスノーランカップ三条大会でも優勝した。
スノーランカップ三条大会を運営するトレイルランナーズ代表の松永紘明さんと、招待選手として参加したスカイランナー松本大選手の勧めで、粟ヶ岳バーティカルキロメーターに出場した。3位の成績には「あまり実感がわきませんが、戦ってる人たちのレベルが違うので、地元の大会での好成績よりずっとうれしい」と素直に喜ぶ。
ほぼ自然体で出場してこの成績なので、伸び代は大きい。競技選手に集中すればプロ選手としてやっていける可能性は高い。しかし、蓑口さんには「あくまで楽しくやったうえで記録が出ているので、それで十分です。スポーツだけに特化した生き方はしたくない」とまったくその気がない。骨太というよりがっちりした骨格で、ふるまいはザ・体育会系な、さわやかなスーパーアスリートだ。
もちろん来年の出場も目指す。このあとは29日の燕マラソン、6月10日に長岡市で越後丘陵公園で開かれるリレーマラソン、6月18日に長岡市のおぐに森林公園で開かれるトレイルランニングに出場を予定している。
(佐藤)