ドラム缶から作る打楽器「スチールパン(スチールドラム)」の進化形ともいえる次世代の金属製の楽器「ハンドパン」の奏者、久保田亮平さん(20)が7日、三条市の地域おこし協力隊に着任した。
ハンドパンは2001年にスイスで生まれた楽器で、インドネシアのガムランのような心地いい響きが特徴。茨城県出身の久保田さんは高校生のときに「YouTube」のハンドパンの動画に魅せられて独学で演奏法を学んだ。
キャリアはまだ数年だが、「久保田リョウヘイ」名義で演奏活動を行い、昨年5月24日にファーストアルバム「RISING」をリリース。昨年後半はヨーロッパでも演奏活動を行うなど国内外で活躍している。
久保田さんは、アーティストのプロデュースなどを行う「株式会社Grand Pacific Work」(曽根幹社長・神奈川県横浜市)に所属する。同社は佐渡市在住の婦人アーティスト「婦人倶楽部」をプロデュースしている。
曽根社長が婦人倶楽部の相談で新潟県庁を訪れたときに、あわせて久保田さんを紹介した。国内ではハンドパンの製作者がひとりしかなく、入手が困難。どこかでハンドパンを作れないかという思いを伝えると、県から三条ものづくり学校の斎藤広幸事務局長を紹介された。
製作について「NPOステージえんがわ」(長野源世理事長)の副理事長でもある包丁を作る株式会社タダフサ(三条市東本成寺)の曽根忠幸社長を同じ同じ「曽根」姓の縁もあって訪問したところ、気に入ってもらえた。そこから三条でのハンドパンの製造、久保田さんの地域おこし協力隊の話が進み始めた。
昨年9月に三条ものづくり学校でハンドパンライブを行い、ことしは1月のNPOステージえんがわのイベントで演奏し、4月にも三条ものづくり学校で開かれた「燕三条 工場蚤の市」でライブを行っている。
久保田さんは東京都葛飾区から三条市へ移住し、地域おこし協力隊の任期は来年3月31日までで、最大で3年間、更新できる可能性がある。三条市まちなか交流広場「ステージえんがわ」を活動拠点にハンドパンの演奏活動を国内外で展開し、あわせて三条産のハンドパンの製作、ハンドパンの普及を通じて三条市をPRし、盛り上げていく。
ステージえんがわを活動拠点とする地域おこし協力隊は久保田さんで4人目。NPOステージえんがわでは、空き家を活用したものづくりや文化にかかわる協力隊が一堂に住めるシェアハウスのようなものをつくる計画を立てており、久保田さんはその皮切りでもある。
久保田さんは7日、国定勇人市長のもとへあいさつに訪れ、演奏を披露した。使ったハンドパンは碁石のように中心が膨らんだ形状で直径50センチ、厚さは最大30センチほどの大きさがある。
演奏を聴いた国定市長は、「まったく印象と違う。もうちょっと東南アジア寄りかと思った」、「目を閉じて聞いてるとこの形状の楽器ではないような気がする」と見た目とからは想像できないヒーリング系の音色に驚き、「すげーな」、「感動した」、「おもしろいです」と率直に感嘆の声をあげた。実際に自分でもたたいてみて、コツをつかんでだんだん鳴るようになってくると「気持ちいい!」と面白さも体感した。
すでに三条市内の数社が分業する形でハンドパン製作のプロジェクトがスタートしており、Grand Pacific Workの曽根社長は年内に初号器を完成させたいと言い、国定市長は「1年半後に三条産のハンドパンが世界ブランドになるように。そこを目標に」とミッションを与えた。
ハンドパンの製造はひとり月産3台ほど。音階が固定されているので、違う異なる音階で演奏するには、その数だけ違う音階のハンドパンが必要になる。1台20万円前後するものが多くてハンドパンを始めるハードルは高いが、より低価格のエントリーモデルの開発も期待される。
久保田さんは「そこに音楽があればもっとまちが楽しくなるのでは。楽器を知ってもらって海外からいろんな人が三条の文化を知ってもらえて音楽を聞いてもらえたらうれしい」と話した。
(佐藤)