三条市に住む自称「折り紙造形家」、近藤隆明さん(33)の初めての作品展「Paper ART curiosity」が、24日まで三条市旭町1の「バー・ベロニカ」で開かれている。
それほど広くない店内にモビールのように近藤さんの作品が揺れる。大きい作品は模造紙ほどある大きなケント紙など厚手の紙から作る。
どれも幾何学的な複雑なフォルムで、折るだけでなく切ったり張ったりもしているが、それにしてもどう計算して造形しているのか想像できない。作品のなかで連続する意匠は、60〜70年代のサイケデリックなデザインも想起させる。新しさと懐かしさが同居し、もともとアーティスティックなムードの店内装飾と相まって斬新なインスタレーションを生み出している。
新潟市東区の出身。都内の大学に通っていたときにフジロックなど全国の音楽イベントを体験し、卒業して25歳でUターンしてからクラブイベントなどにかかわるようになった。そのうちにイベントの装飾を頼まれ、風船を飾るなどした。
2013年に新潟県越後妻有地域で3年に1度行われる「大地の芸術」で、作家が地域の人と折り紙を共同で制作しているのをネットで見かけた。印刷会社で紙を扱った経験から自分もやってみようと始め、大きい作品がおもしろいと言われ、だんだん大きな作品を作るようになった。
14年にそれまで新潟市で続けてきたクラブイベントが終わった。仕事でも精神的に疲れ、仕事を辞めたが、失業中も折り紙の制作は続けた。データを納品するデジタルな仕事でなくモノを届けるような仕事に三条市の商社に就職、移住した。
今は営業職だが、「現場の手伝いをすることもあって、図面を見ることもあって折り紙と仕事がリンクし始めた」と言う。
制作はいろいろな本を読んで学んだが、3Dソフトなどは使わず、パソコン上で設計図を書き、プリントアウトして組み立てる。意外とアナログな作業だ。昨年は三条市の野外音楽フェス、三条楽音祭のステージ装飾も手掛けたが、大半は無報酬のボランティアで手伝っている。
「仕事にしていこうとは思っていない」と近藤さんはきっぱり。「だって売れませんから」と大きな声で笑う。それでも制作を続けるのは「ものづくりの達成感。自分が作ったものを人が喜ぶ顔を見られるのがうれしい」と言う。
「最後の形になった瞬間、苦労が報われる瞬間がたまらない。今回も展示が終わった瞬間がうれしかった」と言い、「職人の妥協のない部分は勉強になります。そこは三条に来てよかった」と話している。
平日は午後8時から営業、日曜は午後1時から4時まで営業で入場無料。また、23日(土)は午後8時からワンドリンク付き1,500円でクロージング・サウンド・パーティーが開かれる。問い合わせはバー・ベロニカ(0256-32-1271)へ。