弥彦村・弥彦山の山開きが16日行われ、表参道登山道が解禁になった。表参道登山道は冬の大雪による倒木や崩落が発生したため、これまで進入禁止にして復旧工事が行われており、本来、山開きを行う計画だった4月16日から2カ月の遅れの山開きとなった。
山開きには一般参加者約150人も参加。午前8時半から弥彦神社の拝殿前でおはらいを行ったあと、登山道入り口で弥彦観光協会の神田睦雄会長、弥彦神社の渡部吉信宮司、林順一弥彦村教育長、弥彦山岳会の小林頼雄会長の4人がテープカットした。続いて山頂の御神廟(ごしんびょう)まで登っておはらいを行った。
昨年12月6日の大雪で表参道登山道は複数カ所で倒木や登山道の崩壊が発生し、弥彦村では弥彦神社と協議して12月下旬から進入禁止にした。それにもかかわらずことし1月13日、新潟市の60歳の女性が倒木の下敷きになって死亡する事故が発生した。
村では5月18日から復旧工事を始め、6月いっぱいの完工の計画だったが、1日も早くとの村の強い意向もあり、月末を待たずに予定より2週間も早く進入禁止を解除し、山開きができた。
死亡事故があったのは、登山道を登ってすぐの山小屋「清水茶屋」の目の前。関係者の話を総合すると、1本のスギが根っこから抜けるように持ち上がって山の下に向かって倒れ、その下のスギも倒れた。そのスギが清水茶屋の上側にあるケヤキの木を引っかけて枝を折り、折れた枝が女性を直撃したらしい。一般参加者の中には事故現場で手を合わせる人もいた。
清水茶屋も登山道が進入禁止になっている間は営業しなかったが、山開きに合わせて今シーズンの営業を開始した。明治時代の創業で、4代目の燕市吉田地区に住む田中卓さん(77)が1970年から父の仕事を手伝い、93年から妻が中心となって営業を続けている。
田中さんは「これほどの大雪被害は初めて。通行止めになるほどのことはなかった」と驚く。スギが倒れることはあっても登山道をふさぐようなことはなかった。それでも清水茶屋は一度も雪下ろしはしなかったが、倒れなかった。スギの木は清水茶屋の前のひさしをかすめるほどの登山道上に倒れ、間一髪。倒れたスギは登山道わきのコンクリートを砕くほどの破壊力で、清水茶屋の上に倒れたらひとたまりもなかった。
「山開きしたのに店が開いてなかったでは、かっこ悪いから」と田中さん。前日15日は飲み物など販売する商品を清水茶山で背負って上げた。毎年11月いっぱいまでの営業だが、ことしは山開きが遅れた分、期間が短くなったため、この日は、人気のコンニャクの販売を中止した。「コンニャクはいたみやすいから始めると毎日、店を開けないとだめなので、どうしようかと思って」。営業は土、日曜は行うが、平日営業も続けるかどうかは微妙で、「できれば天気がいい日は開けていこうと思うんだけど」と思案中だ。
山開きには県外から参加した人もあり、長野県から参加した女性もいた。なじみ客も多く「お久しぶりです」と声をかけられ、妻とハグする女性登山者もいた。
弥彦山は北に角田山、南に国上山と、いずれも弥彦山より標高の低い山が連なり、合わせて「西蒲三山」と呼ばれる。新潟市西区から登山に訪れた71歳の男性は「毎日、国上とか角田で我慢してた」と今シーズン初めての弥彦山登山に目を輝かせた。
角田山、国上山の登山では「やっぱり物足りない」。表参道登山道が進入禁止のときも多くの登山者がそれを無視して登っていたが、男性は注意を守り、この日は待ちに待った弥彦山登山。この10年ほどで登山中に沢へ転落した人と急病人の2人を救ったことがあり、「小さな山だからとあなどってはいけませんね」と自身にも言い聞かせるように話していた。
(佐藤)