燕市は26日から29日まで燕市文化会館で市内小学校合同鑑賞会を開き、市内15小学校の児童約4千人が順番にSMAPの作詞で知られる作詞家で小説家の森浩美さんによる朗読劇を鑑賞している。
4日間とも午前と午後の2ステージ、計8ステージを行い、多くの学校の小学生はバスで会場まで送迎。初日26日は午前に燕西小3年生以下と粟生津小、島上小、午後は燕西小4年生以上と小池小の児童が鑑賞した。
上演しているのは、森さんの短編集『こちらの事情』(双葉社)に収録された作品「晴天の万国旗」。森さんが自身の小説を自ら戯曲化し、それを10人ほどの演者とギターやピアノの生演奏をまじえてつくり出す空間「家族草子」の朗読劇として上演している。今回もキャスト10人、スタッフ7人の大所帯だ。
朗読劇と言えば、立ったり座ったり歩いたりくらいと想像するが、本を持たないキャストも舞台に現れ、演劇さながら。キャストが客席に入り込むこともあり、26日午後の公演では、小学生は大きな声で笑ったり驚いたりと舞台に熱中していた。
森さんはSMAPの「青いイナズマ」や「Shake」をはじめ、田原俊彦の「抱きしめてTonight」、森川由加里の「SHOW ME」、Kinki kidsの「愛されるより愛したい」などのヒット曲を作詞し、家族を題材にした「家族の言い訳」、「こちらの事情」など数多くのロングセラー小説を発表している。
森さんは5年ほど前から「家族草子」を手掛けている。昨年10月にも燕市で公演し、好評だった。今回は小学生対象の公演なので小学生が登場する作品をと、小学生を中心とした家族や友だちとの関係性を描いた心に染みる「晴天の万国旗」を選んだ。
いつもは観客はおとなが対象のため、小学生が理解できる言葉に変えたり、飽きないように動きを増やしたりと工夫し、今回のために初めての小学生バージョンをつくりあげた。
「ねらいは当たりました」と森さん。低学年は動きで笑ってもらい、高学年はちゃんと筋がわからないとおもしろくないだろうと、「その両方を満足させるのはチャンレジだった」と言う。「1日2回やってみて、まあまあいけるのではと思った」、「あんまりやわらかく、かみくだきすぎちゃっても風合いがなくなっちゃう。そのさじ加減が難しい」と十分な手応えを感じた。
会場の大ホールは約600席あるので、マイクを使った。本来は生声でやりたいと思っているので、おとなでも200席、大きくても450席くらいで、これほどの大きな箱も初めて。「その点では逆に客席を走ることができたのでおもしろかった」。
朗読劇とは思えないスタイルなので「朗読劇とは言いたくない。かといってお芝居じゃないのは確かで“家族草子”というスタイルを広めようと思っている」と言う。
全国各地で子ども観劇のような事業はたくさん行われている。自治体や教育委員会は新たな公演を探しており、森さんへも問い合わせがある。「燕市でこういうことやるんですよって言ったら、ぜひその結果を教えてくださいと全国から話が入っていて。だめかなと思ったけど、うまくいきましたよ、こう見せられますよ、という話ができるので、良かったなと思います」と、森さんにとっても新たな一歩の成功を喜んでいた。