1738年(元文3)の開湯からことしで280年になる新潟県南蒲原郡田上町の湯田上温泉。忘れ去られていた旧温泉街を舞台に往時をしのばせるノスタルジーにひたりながらアーティストやコレクターの展示作品を鑑賞し、まち歩きをするイベント「湯のまち巡り〜軒先アートギャラリー」が、ことしも30日(土)、7月1日(日)の2日間、開かれる。
1960年(昭和35)ごろ、湯田上温泉には20数軒もの旅籠(はたご)があった。芸妓(げいこ)は40人を数えるにぎやかな温泉街だったが、狭い山道で大型バスが通れないため、山の下へ移転する旅館が相次ぎ、旧温泉街の灯は消えた。旅館などの施設は時間が止まったようにそのまま取り残された。
昭和の旧温泉街の痕跡は今も至るところに残る。そうした魅力をまちづくりに生かそうと、ことしも地元のアジサイの名所、護摩堂山で23日から7月20日まで開かれている「あじさいまつり」にあわせて「湯のまち巡り」が開かれる。
展示場所は旅館や寺社など20カ所。展示作品は陶芸、写真、クラフト、瓦アート、ほうろう看板、古本などさまざまだ。
拠点は田上町コミュニティセンター。以前から地元大学生も参加しているが、ことしは新潟市秋葉区の新潟薬科大学が初参加で、季節の草花を利用したアクセサリーや小物を販売する。また三条市の「道の駅 庭園の郷 保内」と加茂市の新潟経営大学観光経営学部がコラボレーションして苔玉作りのワークショップを行う。
イベントで注目は、30日だけ行うまちあるき。田上町コミュニティセンターに午後1時半集合の「旅館館主と行くガイドツアー」と午後6時集合の「湯のまちナイトウオーク」がある。
とくに「湯のまちナイトウオーク」は参加者100人を集めようと張り切っている。地元の新潟経営大学中島ゼミと新潟中央短大村木ゼミが中心となって企画した。加茂市で毎年行われているあかりのイベント「AKARIBA」で設置されるあかりを旧温泉街にともし、ランタン片手に歩く。浴衣での参加を歓迎し、浴衣で参加した人には特典も用意する。
「旅館館主と行くガイドツアー」は、湯田上温泉・末廣館の細井廣行さんと旧温泉街をめぐるツアーで、旧温泉街の魅力をたっぷり紹介する。いずれも事前申し込みは必要なく、参加したい人は直接、会場へ出向けばいい。
ほかにも30日の午前10時から午後4時まで田上町コミュニティセンターで湯田上温泉開湯280年特別企画として280人の子どもの手形を押してアジサイをデザインする新潟中央短大が企画した「Kitpas あじさい手形アート280プロジェクト」を行う。
2日間とも午前10時から午後4時まで田上町コミュニティセンターに新潟県立植物園がさまざまな品種のアジサイを展示する「アジサイ展 in 田上」を開催。2日間ともインスタ映えするアジサイがきれいなスポットを紹介する「あじさいフォトスポット」を行うなど盛りだくさんだ。
実行委員長の田上町議、池井豊さん(55)は「新たに地域知財の見直しを考えている」という。地元の旅館の末廣館には「墨田の花火」、わか竹には「アナベル」といった品種のアジサイがある。田上町コミュニティセンター近くの個人宅ではたくさんの品種のアジサイを育てており、この2日間はオープンガーデンのように公開しようと考えている。
しかし今までそうした情報がなく、これから湯のまち巡りを考えていくためにも、まずは地域知財をあらためて見直す必要があると考えているもので、来年以降の取り組みに向けた新たな出発点ともなる。
2日間とも午前10時から午後4時半まで田上町役場臨時駐車場、田上町コミュニティセンター、田上駅、湯ったり館前を往復するシャトルバスを運行する。湯のまち巡りに関する問い合わせは主催の田上町観光協会(電話:0256-57-6225)へ。
(佐藤)