燕市で1日、全国初の研究機関との協働による総力型サイバーフィジカル防災訓練や新たに聴覚障害者訓練も盛り込んだ全市一斉の総合防災訓練が行われた。
毎年恒例の訓練で、震度6強の地震を想定して午前は市内41カ所に設置した避難所への住民避難訓練とあわせて聴覚障害者訓練、サイバーフィジカル防災訓練、午後は市役所で災害対応訓練が行われた。
聴覚障害者訓練は、避難所を設置した分水福祉会館で行われた。40人ほどが避難し、うち5人が聴覚障害。職員は避難所での注意や行動について説明し、聴覚障害者にはそれとは別に職員が手持ちのホワイトボードに文字を書いて筆談で伝え、訓練の予定になかった燕市手話通訳士も手話でサポートした。
訓練に参加した燕市聴覚障がい者協会会長の和田誠さん(48)は「訓練がなければ慌ててしまうのであらかじめ訓練できてよかった。高齢の聴覚障害者は読み書きが苦手な人が多いので、手話通訳士がいた方がいい」と感想を話した。
サイバーフィジカル防災訓練は、筑波大、富山大、京大、防災科学技術研究所などによる「CREST CyborgCrowd プロジェクト」と燕市が協働して行った。柳山地区で被災カ所を示す赤い○や△印を道路上や建物に付け、それを発見した避難住民が専用サイト場所と被害内容を報告。その情報を地図上にマッピングしてどこにどういった被害があるかが一目でわかる。
同時にドローンで上空からの被災状況を調査した。撮影したい建物の位置や撮影方法を設定すると、オペレーターが操作することなくドローンがGPSを使って目的地まで飛んで行き、撮影して帰還。その画像をデータから3Dデータを作成し、被害状況をリアルに把握できる。鈴木力市長はドローンが撮影するリアルタイム画像をモニターで確認し、感心して見入っていた。
これらの情報はAI(人工知能)による情報処理とネットワークを介した被災地外の専門家等による情報分析(クラウドソーシング)で迅速に被災箇カ所を特定。市役所に設置した災害対策本部でもリアルタイムで情報共有できる。小池小でも情報を公開し、避難してきた市民は地図上で自分の家の周辺の被害状況を確認し、ぐりぐり動かせる3D画像にも興味津々だった。
午後からは市役所で災害対応訓練が行われた。県防災ヘリ合同訓練は防災ヘリが南魚沼市方面へ出動中のため中止になったが、家屋倒壊に伴う救助訓練、負傷者搬送訓練、トリアージ訓練、初期消火訓練、ちびっこ消防隊放水訓練などが行われ、炎天下での訓練は暑さとの戦いでもあった。
自衛隊や県警の車両展示、専用車両による地震体験や濃霧体験も行った。また、ヘルプカードを紹介するブースを設けた。障害のある人が災害時や外出先で困ったときに支援を求められるようにするもので、自治体の防災訓練でブースが開設されたのは全国でも初めてと言う。
(佐藤)