大河津分水路の抜本改修を行っている国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所と三条市は8日、同改修事業の掘削土砂を三条市が栄地区に造成する工業流通団地に搬出し、有効活用するため「大河津分水路改修事業と工業流通団地造成事業に係る覚書」を締結した。
大河津分水路改修事業は2015年度から32年度までの17年間にわたり、放水路の拡幅とそれに伴う山地部掘削、第二床固改築、野積橋架け替えなどが行われている。全体事業費は約1,200億円にのぼるビッグプロジェクト。これまでは事業は準備が主体で、今年度から本格化した山地部掘削では約1,000万立方メートルの土砂が出る。
その土砂が三条市が造成する工業流通団地の造成に利用するもので、搬出する発生土量は18年度5万立方メートル、19年度25万立方メートル、20年度15万立方メートルの合計45万立方メートルを予定。運搬費用は信濃川河川事務所が負担する。
三条市は、団地の造成に必要な土砂を購入せずに、同事業の発生土を活用することで、大幅なコスト削減になる。信濃川河川事務所は、残土処理にかかる費用を削減でき、地域の活性化に貢献できるという一挙両得の取り組みだ。
信濃川河川事務所では、改修工事で「大河津分水が“ひらく”地域活性化プロジェクト」と題して「抜本改修と掘削土砂の有効活用」に取り組んでいる。掘削土砂を河川堤防の拡幅に利用するだけでなく、地域活性化につながる周辺の事業への有効活用、地域社会への貢献を目指しており、三条市が活用の第1号になる。
市役所で締結式を行い、国定勇人三条市長と田部成幸信濃川河川事務所長がそれぞれ覚書書に署名した。国定市長は覚書の締結に至った経緯について、「工業団地の売却単価をできる限り低く抑えたい」との思いから、造成コストを下げるには購入土より公共事業から排出される土砂の活用が有効と考えていたところで、大河津分水路の改修事業が始まり、信濃川河川事務所と協議を重ねてきたと話した。年内には栄工業流通団地の公募を開始できることにも感した。
田部所長は残土処理にも費用がかかり、「近場で公共事業に役立つとなれば、本当に一石二鳥」で、「川を広げるという、流下能力を上げるという本当の目的のほかに、地域の活性化につながるような事業であればと思っている」と喜び、三条市の土砂の購入と信濃川河川事務所の土砂の廃棄にそれぞれかかる費用が浮き、「まさにこれが公共事業」とマッチングを喜んだ。
今後も沿線の市町村での活用を関係機関と協議しており、地元の燕市とも調整していると話した。