新潟県は19日、9月定例会に提出する9月補正予算案(80億0700万円)を発表。そのなかで燕三条地域をモデルとした画期的な産学官連携を内容とする地方大学・地域産業創生交付金事業に1億4874万円を計上した。
この事業は、産学官連携により企業連合体「機能ホールディングス」の構築などで、地域産業の振興や大学組織改革による高度人材育成拠点の形成などを行う。
具体的には、機能ホールディングスの構築、匠ロボット試作、新潟大学医学部付属病院と連携した高付加価値の医療器具の開発、新大と長岡技術科学大学の協働による産学協働大学院の設置の4点に取り組む。
機能ホールディングスは、AIやIoTを生かした企業間の連携を仕組みをつくる。大学が核となり、海外トップレベル研究者の知見を活用し、複数の企業が連携してひとつの企業としての機能をもつ企業連合体を構築し、個々の零細企業では難しい効率的で主体的な受発注ができるシステムを構築する。
匠ロボット試作は、機械化が難しかった熟練職人の技術を再現するロボットを開発するもので、人手不足が深刻なスプーン研磨などを可能とする匠ロボットを想定している。
新潟大学医学部付属病院と連携した高付加価値の医療器具の開発は、需要側の病院からのニーズに応える医療関連器具の企画、開発に取り組む。燕市で2011年に発足した医療機器産業参入勉強会(15年に燕市医療機器研究会と改称)との連携も考えられる。
新大と長岡技大の協働による産学協働大学院の設置は、大学がものづくりの現場に出て行くのがコンセプト。両大学が協働して燕三条地域に産学協働大学院サテライトを設置し、国内外から学生を呼び込み、県内産業を担う次世代の高度なものづくり技術者を育成する。既存の施設に設置し、定員20人ていどで早ければ来年度のスタートを見込む。
地方大学・地域産業創生交付金は、東京23区の大学新増設抑制とともに東京一極集中の是正、地方大学振興策と位置づけ、地方の大学の魅力を向上させ、その地域の就職を促進する。
県はこのモデル事業に取り組むにあたり、燕三条地域は歴史的にものづくりのリノベーションを繰り返し、次のステップアップにより優れた製品が生まれる可能性が高く、ものづくりの地域として知名度があり、工業出荷額も横ばいを維持し、新潟県発で日本を元気にしてくれるといった観点から燕三条地域がふさわしいと選んだ。
県は先に「新たな価値を生み出す『世界の燕三条』次世代型ものづくりの街の創造」として申請書を国に提出しており、来月にも採択結果が発表される。
(佐藤)