10月4日から7日までことしも燕三条地域の名だたる工場を開放する「燕三条 工場(こうば)の祭典」が開かれる。公式ブックレットには参加工場のマップが掲載されるが、それを電子化して各工場へナビゲーションし、各工場の情報も付加しようと新潟県立三条商業高校の商業クラブ(渡辺聖部長・14人)は、Androidアプリ「ツバサン工場の地図アプリ」を開発し、10月1日にリリースする。
ことしの工場の祭典は、109拠点が参加する。そのなかから、工場の祭典の期間中以外も役に立つように、ふだんから工場見学やワークショップを行っている企業を中心に30社余りを選んで掲載の可否を問い合わせ、承諾してくれた26社を収録する。英語ページもある。
Androidを搭載するスマートフォンやタブレットで動作し、地図上に26社の位置を示すピンが立つ。ピンを選択してGoogle MapのアイコンをタップするとGoogle Mapのアプリが起動し、選択した企業が自動的に目的地として入力され、現地までナビゲーションしてくれる。
それだけにとどまらず各企業の情報も収録する。住所、最寄り駅、電話番号、営業日、商品、工場説明、体験のある企業では体験の内容や料金、さらに生徒が撮影した写真もある。また、工場名の検索や地域、体験の有無、商品などでしぼり込み検索もできる。
アプリは10月1日から三条商業高校のホームページからダウンロード可能になる。工場の祭典を訪れる人にとっては各企業を回る案内役として重宝するはずだ。
商業クラブは地域と連携して活動できる場を模索するなかで、国内外で注目を集める工場の祭典を手伝えないかとことし5月から企画した。当初は各企業の動画製作による発信を考えたが、企業と相談するなかで5月の終わりには地図アプリに方向転換した。
商業クラブにアプリを開発できる生徒はいない。そこで新潟市中央区・新潟情報専門学校に力を借りようと相談をもちかけたところ、専門学校生の卒業制作の一環ということで無償で開発してもらえることになり、英語への翻訳も引き受けてくれた。
商業クラブの主な仕事は、アプリに掲載する情報を各企業を訪問して取材すること。商業クラブの14人は、3つのグループに分かれ、手分けてして夏休みを利用して7月の終わりから8月にかけて各社を回った。
25日、商業クラブの2年生吉井彩華さん(16)と1年生林莉央さん(16)は燕市役所へ訪れ、工場の祭典の担当者にアプリ完成を報告した。吉井さんは「専門学校でアプリの話が全然わからず、ただただ要望を出して、それを専門学校がかなえてくれました」、林さんは「完成したアプリを見たときは、こんなすごいものができたんだと驚きました」と、ふたりにとっても予想以上のクオリティーに仕上がった。
取材には苦労した。林さんは「取材の数が多く、企業の人から日程を合わせてもらったりする調整が大変だった」、吉井さんは「敬語の使い方とか電話で気を使いました。こっちの説明が伝わらなかったあり、何をやりたいんだと怒られることもあったようです」と社会の厳しさも身をもって体験した。
記録的な猛暑の夏に文字通り汗をたっぷり流して完成させたアプリだけに、「工場の祭典でぜひ活用してほしい」とふたりは声を合わせる。
商業クラブ顧問の藤田健教諭は「学校の外とのかかわりは生徒にとって勉強になり、わたし自身も勉強になった。取材を通じて確実に人と話すのがうまくなり、物おじしなくなった。積極的にこういう経験を積めば社会に出ても役に立つ」と生徒の成長を喜んでいる。今後も掲載企業を追加していく考えだ。
(佐藤)