ジャパン・ハウス ロンドンでは、2018年9月6日(木)から10月28日(日)まで、「燕 三条 工場の祭典」とのコラボレーションによる企画展『BIOLOGY OF METAL: METAL CRAFTSMANSHIP IN TSUBAME-SANJO(バイオロジー・オブ・メタル 燕三条 - 金属 の進化と分化)』が開かれ、盛況のうちに幕を閉じた。
ジャパン・ハウス ロンドンは、外務省による戦略的対外発信の強化に向けた取り組みとして、6月21日にロンドンのケンジントン・ストリートにオープンした欧州向けの日本文化の対外発信拠点。「世界を豊かにする日本」という名目のもと、欧州の幅広い層に向けて 日本の伝統や文化、技術、地域の魅力を発信し、日本への深い理解と共感の裾野を広げる ことを目的とした施設である。
このジャパン・ハウス ロンドンのある英国で、燕三条地域の職人の技術を公開するのは 初の試みで、先月の企画展のグランドオープニング式典には英国のウィリアム王子や麻生 副総理も訪れ、燕三条の製品にふれている。企画展の開催期間中は年齢層の異なる多数の 外国人のお客さんで、連日にぎわいを見せていた。
企画展開催期間中の外国人のお客さんの中には、燕三条の職人によるワークショップにほぼすべて参加した方や、この企画展をきっかけにして、実際に燕三条の「工場の祭典」に足を運んだ方、取引に発展した方などが見受けられた。これら外国人のお客さんに対し、燕三条の技術への関心を高めた企画展になったことは間違いない。
またお客さんの中には、三条市の日野浦刃物工房の手作りの鉈に「本当に手作りなのか」と技術の精巧さに驚き、製造過程について熱心に理解を深めていた。
私の訪れた23日には、燕市の大泉物産社長の大泉一高氏による説明会と、同市の飯塚金属株式会社の煙管職人飯塚昇氏によるワークショップが開催され、訪れた外国人に対してものづくり成り立ちや姿勢について語った。外国人のお客さんが職人とふれ合うことで、 展示品の知られざる製作背景について思慮を巡らせ、たびたび質問が飛び交っていた。
質問のなかには「日本での燕三条製品の普及率はどのくらいか」といった質問や「職人の年齢」であったり「働き方」「女性の職人と男性の職人の技術の差」など、製品についてだけでなく、その製造工程にかかる技術者や職人の働く姿に興味をもっていた。
今回のジャパン・ハウス ロンドンと燕三条「工場の祭典」とのコラボレーションによる企画展は、「日本文化とはこうだ」という固定観念を払拭し、「いかに日本を知らなかったか」に気付いてもらうジャパン・ハウスの目的に沿う結果となり、燕三条の伝統の技術と職人の技に対して、深い理解と共感の裾野を広げ、その魅力に目覚めてもらう好機となった。今回の展覧会は、今後の新潟県への来訪者を生み出す誘引となるだろう。
(文・写真:五十嵐巽)