新潟県三条市で閉院した魅力的なレトロな小児科医院をカフェとして再生しようと、地元の専門家たちがスクラムを組んで取り組んでいる。4月中にオープンの予定で、空き家活用の足がかりになることも期待される。
再生が進んでいるのは、三条市元町の三条市立図書館となりに建つ小児科だった旧渡辺医院。大正か昭和初期の建築と思われ、洋館風のしゃれた建築だ。土地は210坪あり、増築されていた住宅部分は取り壊し、病院部分は1階30坪、2階20坪ほどの広さがある。
この建物を生かしてカフェを開くのは、三条市に住む皆川裕さん(32)。昨年8月に勤めていた会社をやめてカフェ&バー「ポテサララボ」の開店準備を進めている。メニューはドリンクにコーヒー、紅茶、ビール、カクテルなど、軽食はポテトサラダやトーストを考えている。店名にもあるポテトサラダはおかずにも酒のつまみにもなり、持ち帰りもでき、午後10時ごろまで営業するつもりだ。
建物は三条市が歴史的建造物として調査している。できるだけ手を加えずに古い病院の雰囲気を残す。皆川さんは自分でも内装を施したり、机やいすを作ったりというセルフビルドも行い、そのプロセスも見てもらっている。
旧渡辺医院は不動産業の有限会社アックス都市開発(三条市神明町)の代表取締役、栗山義弘さん(74)が所有者から委任状を受けて再生に取り組んでいる。所有者から旧渡辺医院をなんらかの形で残したい、活用方法の提案をしてほしいと相談があった。
そのなかで皆川さんがカフェを始めたという話を聞きつけ、栗山さんがマッチングする形で再生が決まった。三条市の西村デザインがディレクション、燕市の金子勉建築設計事務所が建築設計を担当し、さらに2人でコンセプトや企画を立案。三条市のスペースデザインタクミが施工を担当するという布陣ができあがった。
栗山さんは、旧外山虎松商店を取得し、そこを借りて2014年にシェアスペース&ライブラリー「燕三条トライク」がオープンするなど、まちづくりのための空き家の再生に積極的だ。「わたしはここに生まれ育った。空き家を何とかしたい。まちのにぎわいが薄れ、寂しくなるのを何とか解消できないと思っている」と栗山さん。「若い人は地元の人と直接、つながりがない。わたしは長くここにいるので、接着剤としてお手伝いできれば」と支援を惜しまない。
旧渡辺医院の土地にはまだ余裕があるので、コンテナを設置して出店を促し、点から面として相乗効果が上がるエリアにしていこうというアイデアや、2階を滞在施設する計画もある。空き家の所有者と空き家を活用したい人とのマッチングの事業化という構想もあり、これから広がっていくプロジェクトの緒に就いたところとも言える。
(佐藤)