長岡市栃尾地域の下来伝(しもらいでん)集落で3月10日に行われる越後の奇祭「ほだれ祭」のポスターに、昨年のほだれ祭で燕市に住む美容師の田辺あかりさん(38)をはじめ3人の女性がご神体に乗る写真が使われた。
ほだれ祭はことしで40回目。年に1度、ご神体を社の外へ出してみこしに載せ、その上に結婚して1年以内の初嫁が乗る。それを男衆が担ぎ、五穀豊穣や子宝、安産を願う。初嫁は公募し、昨年は8人の初嫁のひとりにあかりさんも選ばれた。
あかりさんは新潟市西蒲区の旧岩室村の出身で旧姓は熊谷。2017年7月に燕市の男性と結婚した。三条市内の繁華街で働いた時期もあり、三条市に友人、知人も多い。
父の熊谷基さんは元小学校教諭で、2012年に亡くなった。燕市の燕西小や三条市の井栗小に勤務したこともある。教頭になって初めての勤務先が来伝地区を学区に含む旧栃尾市の2001年に閉校した入東小。3年間の赴任の間、地域の行事に積極的に加わり、ほだれ祭にも参加して基さんが写ったほだれ祭のポスターが2度、使われた。
中学生のころから父にほだれ祭の話を聞き、「結婚したら、ほだれ祭に出るんだ」と決めていたあかりさん。それまでほだれ祭を見たことはなかったが、結婚を機に「お父さんの思い出的な感じ」で初嫁に応募し、夢をかなえた。
「23、4年前に訪れていた地の伝統文化に参加できたことに感謝しています。1年たって、まだコウノトリはやってきませんが、代々の初嫁さんたちは必ず授かるといいますので、それを信じ、授かり飴やお守りを拝み、待ちたいと思います」とご利益を信じる。
「ポスターにでかでかと載せていただき、うれしさと驚きと、恥ずかしさとありました。友だちや知り合いの方々からたくさんのメッセージをいただきありがたかったです。親子二代でポスターに載せていただき、幸せに思います。この笑顔をいつまでも忘れずに思い出にさせていただきます」と喜んでいる。
memo
一度は見てみたいと思っていたほだれ祭を昨年、初めて見に行った。そこで和服を着たあかりちゃんを見つけた。あかりちゃんが三条市の「酒場カンテツ」で働いていた当時のから知り合いで、特徴的な笑い声は一度、聞いたら忘れない。
聞けばご神体に乗ると言うので、びっくり。取材モードになって経緯を聞くと、父とのかかわりなど素敵なストーリーがあり、記事「ほだれ祭で亡き父に結婚を報告 入東小教諭だった父がかかわったほだれ祭」を書いた。あとで記事を読んだだんなさんが涙を流したと聞き、いい記事を書かせてもらったと感謝している。
2月下旬、仕事で栃尾に出掛け、栃尾に出掛けたらいつもそうするように「道の駅R290とちお」に立ち寄ったらほだれ祭のポスターが張ってあり、そこにあかりちゃんが写っていてまたびっくり。それで再び今回の記事となった。
ことしは統一地方選前で取材に忙しく、ほだれ祭を見に行けそうもない。これからもほだれ祭が近づくたびにあかりちゃんのことを思い出すだろう。
ついでに言うと、初めて見たほだれ祭は、予想したより規模は小さく、村祭りとでもいうようなこじんまりした祭り。商売っ気も薄く、素朴で逆に好みだった。とはいえそれなりの見物客があり、間際に到着すると駐車場所からかなり歩くことになる。昨年は愛称「ちかびっち」と呼ぶ友だちの女性が3人グループで来ていて大いに盛り上がっていた。