新潟県新潟市西蒲区巻甲の「にいだや&ギャラリー野衣(のい)」で3月16日(土)まで「BORO・ボロ」ーホツレと縫合ー上原木呂(うえはら きろ)展が開かれており、国内外で活躍を続ける美術家でパフォーマーの上原木呂さんが体現したポップアートや米国の表現主義の視座から“ぼろ”を再構成した作品を展示している。
上原さんは1948年に当時の西蒲原郡竹野町に生まれ、新潟高校から東京芸大美術学部芸術学科に進学。シュルレアリスムに魅了され、76年にイタリアへ渡り、道化、舞踊、マイムなど身体芸術にも取り組み、演劇や映画にも出演した。
12年間のイタリア滞在後、家業の造り酒屋を継ぐため88年に新潟に戻った。10年ほど前に家業を離れ、時間があれば創作に打ち込む。海外で画商による上原さんの個展に呼ばれてオープニングパフォーマンスを行うなど今も1年の3分の1ほどを海外で過ごし、昨年も中国、台湾、香港、米国などへ渡っており、この会期中も台北で個展が開かれている。
ぼろを使った作品は10年ほど前から手掛ける。代々、続く家にはたくさんの古布が残されている。今回は1、2月にかけて制作した約20点のなかからギャラリー側にもセレクトしてもらった8点を展示する。
素材の8割方が家にあった布団袋、野良着、麻袋、蚊帳(かや)などの古布。上原さんは「絵描きの癖(くせ)」で、100号のカンバスに古布を張り、立って縫う。パッチワーク要素が強いものもあれば、刺し子を施した作品もある。会場中央の作品は展示作業を行ってから、空間構成として新たに会場で制作。そのようすをライブで見られるチャンスもある。
「ぼろを使った初めて比較的まとまった大作を人に見せている。自分でも客観的に見るために人にも見てもらいたい」と上原さん。「ぼろを使った前衛、現代アートという気分。イタリアの60年代前後のアート、半世紀前の世界のよう」で、67年にイタリアで企画された“貧しい芸術”と和訳される美術運動「アルテ・ポーヴェラ」となぞらえる。
「情報過多じゃない、原始的かつモダンな。前衛アートの時代の活力が好き」で、「情報処理的な絵画から新しいものは出てこない。それは個性としてスパークしたものではない」と言う。
「ぼろってきれいなんですよね。手染め、手縫い、手織りが多い。古くなっても味がある」と話し、「ぼくのエネルギーより古布の存在感、マチエールのありようがすごい。絵画表現や彫刻表現にないもの、どこに持って行ってもしっかりしている」と圧倒的な古布な魅力にひきつけられている。午前10時から午後6時まで開場、最終日は午後4時まで。入場無料。
(佐藤)