新潟県三条市下田地区で伝承されて今は記憶だけが残る「中浦歌舞伎」の中間報告会が17日、三条市上谷地とたにコミュニティーセンターひめさゆりで開かれ、今年度の調査成果の報告や関係資料の展示が行われた。
今回の中間報告会では、三条市文化財保護審議会委員の高橋郁子氏による「成果の報告」と、新潟県民俗学会理事・金田文男氏による「中浦歌舞伎の背景」についての報告が行われた。
平成29年、30年と行われた保管資料所在調査・現地調査によって今回、中浦歌舞伎は地域に愛されていた芸能であると再確認された。飯田村(現:上越市)や加茂市の住民から小道具の寄付があったことをはじめ、個人の家で楽しく演じられていたことや、美しい衣装が大切にしまわれていたこと、手作りと思われる小道具の存在など、多くの情報が報告された。
一ノ谷嫩軍旗、奥州安達原、仮名手本忠臣蔵、加羅先代萩、傾城阿波の鳴門など、中浦歌舞伎の演目について、写真や衣装・小道具によって具体的な演出の場面が判明しつつある。中浦歌舞伎についてさらなる調査の必要性があることも報告された。
中間報告会には、中浦集落の住民など40名あまりが出席。調査によって明らかになった写真や衣装などの思い出深い記録の数々に、当時の記憶をたどる年配の方も伺えた。なかには、実際に中浦歌舞伎を演じていた方々も出席し、懐かしそうに報告に耳を傾けていた。
三条市(旧下田村中浦)にて文政年間(1818-31)に上演が始まったとされる地歌舞伎「中浦歌舞伎」。その伝統芸能の伝承や文化財的価値の再認識と再興を目指した詳細調査が平成29年より開始され、高橋郁子氏主導のもと、調査が行われている。
小道具や衣装は一箇所に保存せず各家々に保存させ、火事によって中浦歌舞伎伝承を途絶えさせないように大切に保存してきた。それぞれの家に小道具が置いてあるかもしれないと高橋氏は述べ、中浦歌舞伎だと思われる写真や、関連の印刷物、記憶の中の中浦歌舞伎など、これら情報がある方は三条市に情報を提供して頂きたいと協力を求めた。
(文・写真:五十嵐巽)