まもなく迎える田植えシーズンを前に、JAにいがた南蒲=の下田育苗センター=三条市笹岡=では、イネのタネをまく「播種(はしゅ)」や苗の管理など、「苗半作」ともいわれるコメの出来栄えを左右する苗作りの作業がピークを迎えている。
消費者には見えない工程だが、田植えの時期にあわせて、イネのタネをまく「播種(はしゅ)」と苗の生育を管理する作業がこの時期、行われている。
同JAの播種作業は、農家からの委託を受けて行っており、JAにいがた南蒲管内の三条、下田、田上、見附、中之島の5地区の計6カ所で実施。ことしは6カ所合わせて、管内の水田約9,000haの2割強にあたる2,000ha分ほどを受託した。
そのうち受託量が最も多いのが三条市の下田地区の下田育苗センターで、おなじみの「コシヒカリ」をはじめ、「新之助」や「こしいぶき」、酒米の「越淡麗」、「五百万石」、もち米の「こがねもち」、「わたぼうし」、このほか業務用や飼料用を合わせて約800ha分の苗を出荷予定だ。
播種作業は、4月2日から19日までの予定で行なっている。出芽した苗は、天気や水など細心の注意を払いながら管理し、5月初めころから順次スタートする田植えにあわせて出荷できるように育てている。
播種作業はオートメーション化されており、30センチ×60センチのプラスチック製の育苗箱がべルトコンベアを流れ、床土、タネもみ、上土、水の順で入っていく。1枚にまかれる種もみは150グラムで、土と水の入った育苗箱は1枚7キロほどの重量になる。
室温30度の出芽室に入れ、3日後、スーパーマーケットに並ぶ豆類などの新芽「スプラウト」よりさらに細く小さな1センチほどの芽が出ている状態で出庫。
ここからは人手によるもので、育苗箱をビニールハウス内に1枚ずつ並べていく。職員が気温や天気の状況により、換気をしたり、遮光材を取り除いたりと日夜気を配り、温度や水などの管理にあたっている。
下田育苗センターで作業するJA職員で営農指導員の三本和明さん(36)によると、播種の作業は一般の農家より数が多いこともあり、年明けから始まる。昔から「苗半作(なえはんさく)」といわれるように苗の良しあしが田植え後のイネの生育に大きく影響する。「農家の皆さんがそうであるように、この作業に入ると24時間、気が休まらない」と言う。
風が吹けばビニールが飛ばないか、ヒョウが降れば穴が開いていないかと心配し、日が差せばハウス内の気温が一気に上がることもあり、季節はずれの雪が降る日もある。「(苗は)動かないけれど生き物」と常に気にかけ、「いいコメを作ってほしい。農家さんに喜ばれる苗を作りたい」と話していた。
同センターには、長さ50メートルのビニールハウスが20棟あるほか、下田地区全体で大小合わせて120棟で苗を管理しており、毎日、同センターの職員8人、季節雇用者20人、応援職員14人の計40人ほどで作業にあたっている。
(坂井)