新潟県三条市の粟ヶ岳(1,293m)を舞台に4月20、21日の2日間、山岳を駆け上がるタイムを競うスカイランニングの世界大会が開かれた。2日目の21日は今シーズンのワールドシリーズ開幕戦となる「粟ヶ岳スカイレース」が行われ、世界のトップ選手ら106人が参戦して残雪の粟ヶ岳と春の下田郷を抜ける23kmのコースを快走した。
世界11カ国で15レースを転戦する今シーズンのスカイランナー・ワールド・シリーズの開幕戦として開かれた。このシリーズの日本での開催は2006年、07年と長野県で開かれて以来12年ぶりで、粟ヶ岳ではもちろん初開催だった。
2016年から粟ヶ岳でスカイランニング大会が開かれ、昨年は日本選手権となり、ことしはついに世界大会となった。106選手のうち13カ国の約50人が海外選手。その半数はスペインで山岳の多いヨーロッパ各国をはじめ、アメリカ、アフリカのジンバブエやアンゴラからの参加もあった。
スタートの午前8時の三条の気温は9.5度。上着を着ても肌寒かったが曇り空で風はなく、走るには絶好のコンディションに恵まれた。カウントダウンに続いて国定勇人三条市長のピストルを合図に選手はいっせいにゲートを飛び出した。
沿道では地域の人たちや下田中学校の生徒が声援を送ったり、和太鼓を打ち鳴らしたりして選手を応援し、エイドステーションでドリンクをサービスしたり、選手が見えないところで交通規制したりといったボランティアがあってこそ大会が成り立っていた。
下田中学校は、日本選手権だった昨年に続いて吹奏楽部が演奏したり、歌詞の一部を「スカイランナーズ」に変えた応援歌を歌ったりして大会の盛り上げに貢献した。
男子優勝は「プリンス」こと上田瑠偉選手(2:01:42)で2位とは9秒差。上田選手は22日にブログの投稿で「初めてのワールドシリーズでのタイトル獲得、そしてそれが日本で獲れたというのは本当に嬉しかったです」と書いた。昨年7月に右前十字靭帯を損傷し、練習が継続できていないなかでの今回のレースだったが、「スキーシーズンが終わったばかりでまだほとんど走る練習をしていなくてこのリザルト。これからのレースが楽しみです」とも書いている。
女子の優勝はイタリアElisa Desco選手(2:27:46)で、国内選手は医師を続けながら世界を転戦する高村貴子選手(2:28:56)の3位が最高だった。5.5kmのコースで日本選手権だった昨年の粟ヶ岳バーティカルキロメーターでは、男子は上田選手、女子は高村選手が優勝している。また、この日はミニスカイレースとして、棚田、八木ヶ鼻、薬師の3コースの競技も行われた。
3年前に粟ヶ岳でスカイランニング大会を主催した「トレイルランナーズ」の代表、見附市のプロトレイルランナー松永紘明さんが、今回のワールドシリーズ実現の立役者。1日目の20日はやはり世界戦の粟ヶ岳バーティカルキロメーターが開かれ、松永さんは「本当に日本に世界がやって来た。粟ヶ岳が世界に知られることになった大事な一日目だった。きょうはその10倍くらい格は上なので、人数的にも世界トップ50のうち30人くらい来てくれた。粟ヶ岳が世界に注目される舞台になる大事な日」と喜んだ。
今後は「最低10年はやっていって、みんなが知るところになって初めてその価値が出てくると思う。5年、10年で終わる気はない」と断言。「下田だけじゃなく、新潟、日本がどう変わっていくかというスパンで見ている。それができるのは地元の最初から何言ってんだこいつみたいなときから応援してくださってる五百川や森町の集落の人が応援してくださっているから。世界中の注目を浴びさせますよ」と声を弾ませた。粟ヶ岳スカイレース男女5位以上の結果と粟ヶ岳スカイレースを伝えた動画は次の通り。
MEN
WOMEN
(佐藤)