5月9日から23日まで新潟県燕市で民泊を利用して合宿練習しているモンゴルのパラアーチェリー選手団が14日夜、豪華なモンゴル料理の手料理をふるまって受け入れ側の担当者と交流した。
2016年に燕市は2020年東京パラリンピックのモンゴルのパラアーチェリー選手団の事前合宿を受け入れる覚書を交わした。東京パラリンピックに先だってこれまでも合宿を受けいれており、今回で3回目になった。今回は選手団は選手5人とコーチ1人、協会事務局2人の8人。
これまでの合宿はホテルに滞在したが、今回初めて市内の登録民泊施設「華蓮(かれん)」に宿泊している。華蓮は米納津地内の一軒家。昨年6月15日に初めて民泊として届け出された新潟県内12カ所のうちのひとつで、華蓮にとっても今回が初めての民泊の利用となった。
選手団は華蓮で自炊していることもあり、毎日のように接している燕市の担当者にモンゴル料理をふるまって交流しようとなった。食材などは参加した担当者ら7人が持ち寄った。
献立は蒸した小麦粉で作った麺と牛肉、野菜を一緒に蒸した皿うどんのような「ツーワン」、肉汁がたっぷり入ったモンゴル風蒸し餃子とも言われる中国の小籠包のようでもある「ボーツ」、パリパリした皮にジューシーなひき肉を包んだ揚げ焼き肉まん「ホーショル」の3品がメーン料理。家庭でこの3品を用意するのは旧正月など特別なときに限るという豪華フルコースだ。それにサラダやミルクティーも用意した。
味付けは控え目で、素材の味を生かしている。物足りなければ、好きなだけしょうゆやケチャップをつけて食べればいい。日本人の舌にも合っていて、市の担当者は腹いっぱいだった。
調理は麺や皮から手作りし、手がこんでいた。男性が麺の生地をこねたり、ひき肉を皮で包んだりと、男女関係なく選手団みんなが台所に立って協力しているようすに「日本だったら男は座って料理を待ってるところだけど」と苦笑いしていた。
国境を越えて食事をともにしながら食文化はもちろん、モンゴルの文化や人生観の違いまで話に花が咲いた。選手団の女性が、日本人の男性は若く見えるので、ひとりずつ年齢を教えてほしいというリクエストもあり、和やかな雰囲気だった。
モンゴルのパラアーチェリー協会会長で北京五輪パラリンピック金メダリスト、ダンバドンドグ・バータルジャブさん(57)は初めての民泊について「みんなリラックスした気分で仲良く取り組んでいる。ホテルはひとりずつ部屋に入って過ごすが、ここではみんなで食事をして、大丈夫かとか声をかけられる。すごくお互いのコミュニケーションがうまくいっている」と、ホテルよりはるかに快適に過ごしている。
コーチのゾルボー・バーダルジャブさんは、「初めて日本中でモンゴル料理を作ることができた」と、母国の料理を日本で作り、世話になっている人たちにふるまえたことを喜んでいた。
練習は吉田アーチェリー場で連日、行っている。吉田高校との合同練習もあり、16日は農業体験、21日は産業史料館の見学、体験もある。
(佐藤)
memo
モンゴルでは、夕食を食べきらずに次の日のために残すという。あすの朝、残りを食べるんだ、あすも生きるんだという意志や願い、験担ぎなどが込められていると言う。モンゴル人は、子どもたちにたくさんの財産を残せたことを喜びながら死ぬよりも、自分が体験したいろいろな楽しい記憶を思い出しながら死にたいと願うのだとか。
生に対する感謝や執着が強く、個人主義が強いことなど、やはり日本人とはものごとのとらえ方や価値観がかなり違うことがよくわかり、興味深かった。民泊で見るモンゴル選手団のようすは今までになくリラックスしていて、ぐっと距離感が縮まり、有意義な時間だった。