新潟県加茂市の加茂山に社殿を構える式内社、青海神社(古川洸宮司)の「加茂祭」とも呼ばれる春季大祭が5月21日行われた。前夜からの雨は御神幸行列が出発前にぴたりとやみ、新しい元号「令和」の始まりを祝って新調された53本の新しい大祭ののぼりがはためき、新時代にふさわしい春祭りだった。
青海神社の古伝によると、越後の名将上杉謙信は1530年(享禄3)正月に三条城に生まれ、母は長岡栖吉城主肥前守長尾顎吉の娘で虎御前。たまたま三条城にいたときに懐妊を知り、加茂明神(青海神社の通称)に祈願を込め、自身も月参りをして安産を祈ったとされる。
青海神社は青海神社、賀茂神社、賀茂御祖神社の三社の本殿を合殿してまつり、午後1時半から降神之儀を行ってそれぞれの御霊(みたま)を3基のみこしに移したあと、御神幸行列が出発した。
行列は「青海大明神」、「加茂大明神」と墨書したのぼり旗を捧げた子どもたちを先頭に女の子の稚児、男の子の徒士(かち)、みこしなどが続き、数百人で編成する。特徴的なのは、生後1年くらいまでの赤ちゃんを背負ったお母さんが、赤ちゃんに豪華絢爛な産衣をかけて歩く行列。加茂御祖神社の祭神、玉依媛命(たまよりびめ)に、愛児が健康で美しく育つようにとの祈りを込めて供奉(ぐぶ)することから「乳母祭」とも呼ばれ、ことしも約50組の母子が参加した。
猛暑に見舞われて赤ちゃんの体調が心配される年が多い。前日までは真夏同然の猛暑が続いていたが、前夜からの雨が熱気を冷ましてくれ、この日の最高気温は三条で21.4度。前日の31.0度から10度近くも下がり、例年は必須の日傘も必要なく、お母さんはあまり赤ちゃんの心配をせずに歩けた。
春と秋の大祭では境内に「青海神社大祭」と書いたのぼりを掲げている。これまで40年ほど前に作ったタケざおののぼりが30本ほどあったが古くなって傷んでいたため、改元を機に新たに奉納を募り、53本ののぼりに新しくした。
加茂山のうっそうとしたスギ木立の中ではためく真っ白なのぼりは、それだけ厳粛で非日常な空気を演出していた。
御神幸行列では、古川宮司も生きたウマに乗って進む。途中、秋房と矢立の2カ所で神事を行って約6キロ、子守、稚児、徒士はその半分ほどを練り歩いた。
【写真集】