社会福祉法人恩賜財団済生会が新潟県三条市大野畑に設置する特別養護老人ホーム「長和園」が建て替え新築工事が完成し、5月24、25の2日間、一般向け内覧会が開かれている。新施設には自分の目で確かめてみたくなる見どころがいくつもあった。その中から5つを紹介する。
1. 4階からの眺望
25日の内覧会は、午前10時から午後3時まで。まず1つ目は、最上階4階からの眺望だ。新しい長和園は信濃川に架かる三条大橋の右岸側にある。三条大橋側のベランダに出ると、三条大橋から瑞雲橋へと流れる信濃川と三条防災ステーション、市街地を望むことができる。
眼下に広がる風景はそれだけで十分、気持ちいいが、三条防災ステーションの川岸は三条夏まつり大花火大会の打ち上げ場所で、絶好の花火ビューポイントになることも容易に想像できる。
2. 階段のカラーリング
初日24日に内覧会に出掛けた人はほとんど気づかなかっただろうが、2つ目は東西に2つある階段だ。4階へはエレベーターで上ったが、下りはせっかくなので階段を利用することにした。驚いた。階段の表は赤、裏は緑、手すりは青と黄と、彩度の高い色で塗り分けられている。懐かしいイタリアのベネトンカラーを連想させる。1980年代ごろに流行したベネトンにあこがれた世代にはぐっとくる。
このカラーリングは「やっと自分の思い通りにできるようになった」と話す木村善行施設長の提案だ。塗る色を変えるだけなら費用はほとんど変わらない。そんな話を聞いていると木村施設長から「別の階段も見てほしい」と案内されたのが、2階から4階へ続く職員用の階段。忍者屋敷の隠し階段のような配置で、存在に気づきにくい。なんとこちらはらせん階段。同じように赤、青、黄のシグナルカラーに塗り分けてあり強烈なインパクトだ。
3. 踊り場の壁に岩田正巳
もうひとつ驚いたことが3つ目。東側の階段の3階と4階の間の踊り場の壁には、三条市名誉市民の日本画家、岩田正巳(1893-1988)の大作「平和豊穣の女神」が飾られていた。三条市で開業し銀座へ進出した美術商「万葉洞」の先代関谷正治店主から寄付を受けたもの。あまり目にふれなさそうな場所で思わぬ名作に遭遇して感激した。
4. ジェネリックチェア
4つ目はジェネリックチェア。正面玄関を入るとフロアにカラフルないすが並んでいた。確かに見覚えがある。国定勇人三条市長も「座り心地がいい」と驚いたのは、世界的に有名なデザイナーズチェア「イームズチェア」。正しくはそのレプリカ。知らなかったが、版権が切れた家具のレプリカが「ジェネリック家具」などと称して近年、広く出回っているという。これもそうしたもののひとつだ。
そしてこれもデザイナーズチェアの「スワンチェア」。極めつけは、またしても木村施設長が「これも見て」と教えてくれた施設長室にある伝説のソファ「ル・コルビジェ」だ。これもデザイン誌などで何度も目にしている。ジェネリックとはいえ、あこれがれの超有名なデザイナーズチェアをいくつも同時に見られてうれしい。
5. 自由見学は内覧会だけ
そして5つ目は、25日までの内覧会だからこそ自由な見学が許されること。それ以降は身内に利用者でもいないと、なかなか気軽に内部に入ることはできない。ほかにも中庭に職員が手作りしたオブジェや思わせぶりなバラの花1輪が新聞紙で包んだ花瓶に挿してあるなど、斜め上を行く見所が多い。老人ホームとは思えないスタイリッシュな外観や北欧テイストの室内デザインももちろんだが、見どころが気になった人はぜひ内覧会に足を運びたい。
(佐藤)