新潟県三条市の銅版画家、鶴巻貴子さん(40)の個展「花薫る日々」が5月25日から7月7日まで弥彦村の弥彦の丘美術館で開かれている。
鶴巻貴子さんは、祖父が三条市名誉市民で紙塑人形の創始者、三郎さん。母の純子さんは彫刻家で知られ、父も医師で彫刻家、兄の謙郎さんは神奈川県で日本画家として活躍する芸術家一家に育った。
三条高校から東海大学教養学部芸術学科美術学課程を卒業、日本大学芸術学部大学院(版画分野)を修了。県展では02年に県展賞、05年に無鑑査となり、海外にも出展している。
16年には三条市若手芸術家支援事業として初めて個展が開催され、続いて南魚沼市の池田記念美術館で家族三代5人展も開催。弥彦の丘美術館では2010年に兄の謙郎さんとの二人展が開かれている。
今回は2002年以降に制作した25点を展示。ドライポイントをはじめ、ぼかしも表現できる金属の粉をニスと混ぜて銅版に定着させたカーボランダムという技法や刷ってから手彩色を施したものなど、さまざまな手法を凝らして表現している。
ことしになって制作した6点は、今回の個展に向けて制作した。そのなかでも「思いがけず自分の気持ちを如実に表現できた」と話す会心の作が「Blooming sky 咲く花 エメラルドリリー」だ。「1点の曇りもないと言えば言いすぎかもしれませんが、晴れ渡った空のような作品にできた」と満足する。
近年、イタリアのファブリアーノ水彩紙を好んで使っている。鶴巻さんの作品は赤のイメージだが、この作品は青いインク。ファブリアーノを美しく残しつつどちらも生きるように水彩で彩色した。日本画で使われる金泥や銀泥、顔彩にも新たにチャレンジしており、この作品にも一部に金泥を施した。
「金と銀は物質。それを使った展開も期待している」と鶴巻さん。「多作ではないので毎回、同じものを出して申し訳ないので、少しでも前へ進んでいるところを見せたい」と使命感のようなものも感じている。作品搬入直前まで「最後までもっと良くなるんじゃないかと、ぎりぎりまでやりました。この1週間、あまり眠れず、無事にオープニングできてうれしい」とほっとしている。
2017年は静岡県の浜松市美術館の版画大賞展で大賞を受賞。2018年はロシア・ノボシビルスク美術館で開かれた国際版画展「ノボシビルスク グラフィックアート トリエンナーレ」に出展した版画家の磯見輝夫さん、野田哲也さんなど日本人作家8人のうちの1人に最年少で選ばれ、ROUGEシリーズ3点を出品。同年に新潟県南魚沼市の池田記念美術館で開かれた「FRIEND’S FRIEND 世界の現代版画」に師と仰ぐベルギーのマルニクス・エバレート(Marnix EVERAERT)氏とともに出展。これらの報告も展示している。
会期中は無休で毎日午前9時から午後4時半まで開館。鶴巻さんによる作品解説を6月2日、16日、22日のいずれも午後2時から行う。入館料は高校生以上300円、小・中学生150円。問い合わせは弥彦の丘美術館(電話:0256-94-3131)。
(佐藤)