ノーベル賞晩さん会用金属洋食器の製造で知られる山崎金属工業株式会社(山崎悦次代表取締役・新潟県燕市大曲)の100年記念展が6月7日(金)から7月21日(日)まで燕市産業史料館で開かれ、展示されたカトラリーなど70点が山崎金属工業の100年の歩みを語りかけている。
山崎金属工業は、金属洋食器の産地、燕市を代表するメーカーのひとつ。1918年(大正7)に山崎文言氏(1899-1981)が自宅で工房を開き、真ちゅう洋食器の製造を始めた。それまで文言氏は、鎚起銅器の玉栄堂の今井栄蔵氏(1873-1948)に師事した。その今井栄蔵氏が作った鎚起銅器の急須と花瓶に始まって年代順に山崎金属工業の100年の歴史をたどる。
1971年(昭和46)のニクソンショックで円ドルが変動相場制となり、73年(昭和48)のオイルショックなどで輸出産業が縮小するなか、山崎金属工業は80年に米国にYTI( YAMAZAKI TABLEWARE INCORPORATED)を設立。3代目の現社長、山崎悦次社長(79)はさまざまなジャンルで活躍する米国の5人のデザイナーにカトラリーデザインを依頼し、活路を見いだそうとした。
その5人のプロフィルとそれぞれがデザインしたカトラリーを展示。文言氏の頭像を展示しているが、これもYTIのひとりの彫刻家、アナリース・スティンバーグ氏が制作した。
さらに戦前に製造した洋白のカトラリー、世界で販売したカトラリー、ヒット商品、最近ではKEN OKUYAMAのデザインやJR東日本の「四季島」で使われているカトラリー、伊勢神宮の式年遷宮で他社と共同開発した納めた「瑞音(ずいおん)」も展示する。
91年から現在もノーベル賞授賞式の晩さん会で使われているカトラリーも、もちろん展示している。それに大きくかかわっている山崎社長のクリスタル肖像画を展示する。これはノーベル財団のあるスウェーデンのクリスタルガラスメーカー「オレフォス」がサプライズで山崎社長にプレゼントしたもの。
オレフォスのワイングラスも晩さん会で使われている。山崎金属工業の洋食器が晩さん会に採用される前年の1990年にプレゼントされており、山崎金属工業が広く海外でブランドとしての地位を確立し、晩さん会への採用も必然だったことが納得できる。
山崎金属工業の年譜や系譜図もまとめて展示している。関連イベントとして、6月9日(日)午後2時から作品解説会、16日(日)午後2時から対談会が開かれる。作品解説会は山崎悦次代表取締役が行う。対談会は山崎修司工場長が燕市産業史料館学芸員と「山崎金属工業株式会社の100年を語る」をテーマに対談する。
燕市産業史料館の休館日は月曜、月曜が祝日の場合はその翌日。午前9時から午後4時半まで開館し、料金はおとな400円、小中高校生は100円。問い合わせは燕市産業史料館(電話:0256-63-7666)へ。
(佐藤)