新潟県加茂市で4月21日の市長選で初当選した藤田明美市長は、市長就任からちょうど1カ月となった6月10日、初めて市長として記者会見し、1カ月間の取り組みなどを話した。
藤田市長は、それまで24年間にわたって加茂市政をけん引した小池清彦前市長に代わって5月10日に就任した。会見で藤田市長は、市内中学校の部活動、県央医師会応急診療所への救急搬送、土砂災害警戒区域と特別警戒区域の3点について話した。
中学校部活動の制限の方針は保留
中学校の部活動については、小池前市長は昨年夏に部活動が生徒の負担になっていることなどを理由に夏休みや土、日曜の活動休止の方針を示し、生徒や保護者から強い反発が出ていた。藤田市長は選挙戦でも方針の撤廃を公約にしていた。
5月10日付けでこの方針の保留を各中学校に通知した。通知後、各中学校は担任や顧問が生徒にわかりやすく説明し、PTA総会や保護者会で保護者にも説明。現在は地区大会前なので、土、日曜に練習を設定する中学校があるが、週当たり2日以上の休養日を設定することを原則として活動日を設定している。
応急診療への救急搬送を指示
県央医師会の応急診療所への救急搬送については、これまでは加茂地域消防本部は応急診療所への搬送は行っていなかったが、藤田市長は就任後、直ちに加茂地域消防本部消防長に対して傷病者の症状に応じて必要があれば応急診療所に搬送を行うよう指示した。
これにより「搬送先の選択肢が増え、早い時間で初期診療が開始されることが期待される」。病院側の受け入れも分散され、限られた医療資源の温存にもつながるとした。
警戒区域指定に同意し指定 土砂災害ハザードマップを7月1日発行
土砂災害警戒区域と特別警戒区域の指定については、小池前市長は新潟県が指定しようとする警戒区域は合理性がなく、地価の下落にもつながるとして反対してきたが、藤田市長は大規模な土砂災害から市民の命を守るため指定に同意し、5月31日付けで指定された。
今後は避難場所と避難経路を定め、ハザードマップの作成などを進める。ハザードマップは洪水と土砂災害それぞれに対応する2種類を作成し、洪水ハザードマップは7月1日発行し、土砂災害ハザードマップもできるだけ早く発行する。
清掃センターは排ガス基準を満たし停止命令の解除を受けて焼却再開へ
また、加茂市・田上町消防衛生保育組合が運営する一般廃棄物焼却施設(田上町原ケ崎新田)は、排ガスに基準を超える有害物質のダイオキシン類が検出されたため1月16日から焼却炉1基の運転を停止。改修工事を行い、5月31日ダイオキシン類の測定を行い、分析したところ、この日に検査機関から連絡があった。
排出ガス中のダイオキシン類の排出基準が1立方メートルあたり5ナノグラムのところ、結果は1.6ナノグラムと排出基準を下回った。さらにこの日の午前中に県の環境センターの立ち入り検査を受けており、改善および停止命令の解除を受けしだい直ちにごみの焼却を開始する。
藤田市長は記者からの質問に答えた。応急診療所は小池前市長が午後10時で閉まる施設に搬送するのは危険としていたことに対し、藤田市長は「搬送先の選択肢が増えて市民の生命、安心、安全度は上がる」。建設費の負担金を小池前市長が拒否してきたが、藤田市長はこれまで通り負担金を支払う考えを示したが、具体的な手続きなどについては、これから関係機関などとの話し合いになるとした。
5月21日から応急診療所への搬送をできるようにしたが、実際にこれまで搬送したのは1件だった。ちなみにことしに入ってからの5月末までの救急搬送は653件。
新教育長は6月20日開会する6月定例会で提案する。年間1億円の赤字が出ている日帰り温泉「美人の湯」をはじめ、コミュニティーセンターなど財政的な負担の大きな施設については、「すべて赤字が解消できるわけではない。それでも市にとって必要な施設もある。全体を考えて改革していきたい」とした。
また、五十嵐裕幸副市長の就任については「副市長も市民から喜んでもらえ、いい人事ができた」と述べた。
(佐藤)
メモ
藤田市長の記者会見は空間から一変した。小池前市長時代、記者会見の会場はいつも庁議室で、壁に下がった加茂市の航空写真を背に行っていた。やけにだだっ広く居心地の悪さを感じた。今回の会場はこぢんまりした402号室。藤田市長初の記者会見だったこともあって報道関係者が多く、窮屈なくらいだった。
藤田市長の背中には、三条市や燕市をはじめ、記者会見ではおなじみのバックパネルを設置。加茂市の花「ユキツバキ」カラーなのか赤と紫の中間のような色で「加茂市」や市章に加えて「北越の小京都」、「加茂山公園雪椿」、「伝統的工芸品加茂桐箪笥」などの語句がプリントされている。
よく見れば紙製で、職員の手作り。三条市や燕市は専門業者にオーダーして作っているが、財政再建が大きな課題になっている加茂市は、まずは金のかからない改革からということのようだ。
それより何より変わったのは、会見の時間。小池前市長はひとりで1時間、2時間と話し続けるのは当たり前。3時間にも及ぶこともあり、記者がしびれを切らして会見が終わる前に退室することさえあった。
それが今回は、藤田市長のあいさつが約7分。全体でも30分ちょっとと、劇的にコンパクトになった。もっとも一般的な記者会見のサイズになっただけだが、会見からも市長交代による変化、藤田市長の改革の意欲は色濃く表れていた。