新潟県教育委員会など主催の新潟県考古学講演会が6月29日(土)午前10時から午後3時40分まで燕市分水公民館で「縄文時代の食べ物」をテーマに開かれ、奈良文化財研究所の山崎健氏の講演「動物骨から見た縄文人」をはじめ、5本の講演が行われる。新潟県考古学講演会が燕市で開かれるのは初めて。
県教委は毎年、近年に県内で行われた発掘調査結果などからテーマを設定した講演会を県内数カ所で開いている。新潟県の歴史や埋蔵文化財の魅力を知ってもらおうと専門家が全国的な視野で地域の歴史を語るほか、地元の埋蔵文化財専門調査員が発掘調査成果を発表している。
県内すべての市町村で開催したい考えがあり、これまで開催されたことのなかった燕市でもようやく開催されることになった。燕市で開く材料になったのは、農地の整備に伴って2014年度に現地調査を行った燕市分水地区、大河津分水路左岸側の地域で行った宝崎(たからざき)遺跡だ。
縄文人が暮らしていたと思われる高台の下のごみ捨て場だったと思われる場所を調査し、大量の動物の骨が見つかった。有機物である骨が見つかるのは珍しい。低湿地でぬれて空気にあまりふれなかったのが幸いしたようだ。骨はイノシシ、イヌ科の動物、大型のほ乳類、キジ、カエル、コイ、サケ、海も近いのでタイ、ニシン、カニも見つかり、骨だけで3.4kgにもなった。
遺跡の時代は縄文前期末から後期の中ごろまで。この調査地点の近くには縄文時代の晩期の遺跡もある。出土品は縄文時代中期から後期の初めが充実。動物骨の出土により、縄文の人たちが直接、食べたものがわかったことは大きな成果だった。講演する奈良文化財研究所の山崎健氏は、動物考古学が専門で、宝崎遺跡の成果についてどんな話が聴けるか興味深い。最後にパネルディスカッションもある。
宝崎遺跡では大量の土器も出土した。調査面積約500平方メートルから出土した土器は実に1.4トンにものぼり、1平方メートル当たり2.8kgも土器が出土した計算だ。出土品を洗うだけで1年がかりで、この春、報告書が完成した。
この調査を担当した燕市教育委員会社会教育課文化振興係主査の松島悦子さんは「燕市宝崎遺跡−ゴミ捨て場から見つかった多数の動物骨−」のテーマで講演する。また、会場には出土品の骨や土器の一部も展示する。
ことしの新潟県考古学講演会は、このあと10月5日(土)に柏崎市文化会館「アルフォーレ」で「邪馬台国前後の越後」をテーマに、11月24日(日)に新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」で「縄文時代のはじまり」をテーマとし、計3回開かれる。
燕市での新潟県考古学講演会に参加したい人は、申し込みは不要で直接、会場へ出向く。参加は無料。問い合わせは新潟県教育庁文化行政課(電話:025-280-5620)へ。各講演のスケジュールやテーマ、講師は次の通り。
9:30 | 受付開始 |
10:00 | 開会の挨拶 |
10:05〜10:40 | 「燕市宝崎遺跡−ゴミ捨て場から見つかった多数の動物骨−」 松島 悦子氏(燕市教育委員会) |
10:40〜11:25 | 「長岡市根立遺跡−再検討で明らかになってきた植物利用−」 新田 康則氏(長岡市立科学博物館) |
11:25〜12:00 | 「胎内市分谷地A遺跡−果実酒?を入れた容器の発見−」 伊東崇氏(胎内市教育委員会) |
12:00〜13:00 | 休憩 |
13:00〜13:45 | 「新潟市干納貝塚・豊原遺跡・御井戸遺跡−水辺の暮らし−」 前山 精明氏(新潟市文化財センター) |
13:45〜14:55 | 「動物骨から見た縄文人の食料」 山崎 健氏(奈良文化財研究所) |
14:55〜15:05 | 休憩 |
15:05〜15:35 | パネルディスカッション |
15:35〜15:40 | 閉会 |
(佐藤)