「ハンドパンで遊ぶ会in三条」が6月15日、新潟県三条市のまちなか交流広場「ステージえんがわ」で開かれた。2000年ごろにスイスで生まれた金属製の打楽器「ハンドパン」が国内のイベントではおそらく過去最多の30台余りが集結し、ハンドパンの聖地さながらだった。
茨城県出身で海外でも演奏活動を行うハンドパン奏者、久保田リョウヘイさん(21)は、昨年5月に三条市の地域おこし協力隊に着任し、ステージえんがわで勤務している。
2年ちょっと前にハンドパンの演奏と楽器のコレクションを始めた千葉県船橋市に住む左官竜一郎(さかん りゅういちろう)さん(35)との交流から、この日のイベントが実現。左官さんをはじめ長岡市、埼玉県、秋田県のハンドパン愛好者が所有するハンドパンを持ち寄り、久保田リョウヘイさんのハンドパンも加えて30台余りがそろった。
イベントはハンドパンをさわったことのない人から演奏を体験してもらおうというもので、午前と午後の2回行った。県外からの参加も多く、合わせて30人余りが参加した。ステージえんがわの軒下の「みんなのステージ」にござを敷いて座り、ハンドパンをずらりと並べた。
左官さんがハンドパンが生まれた歴史や構造、たたき方を指導してから自由にたたいてもらった。簡単そうに見えるが、いざたたいてみると音が響かず、ちゃんと鳴らない。指でたたくので、指がハンドパンと接触している時間が長ければ長いほど振動を吸収して響かなくなり、こつが必要だ。
左官さんは熱いものをさわるような感覚でたたき、腕を弓のように使ってとアドバイス。それに従ってあとはひたすらたたき続けていれば、だんだんと大きな音が出るようになり、楽しくなってくる。
新潟市中央区から参加した団体職員の31歳女性は、3年前に三条市で開かれた三条楽音祭に出演した久保田リョウヘイさんを見てハンドパンを知った。その後もイベントで久保田リョウヘイさんの演奏を聴き、ハンドパンが好きになり、久保田リョウヘイさんのファンになった。
中学、高校で吹奏楽部に入り、打楽器を担当し、大太鼓、マリンバ、ティンバニーを経験した。「ハンドパンの深い音色が好き」だが、演奏は「難しい。指も痛いし、響かなくて。でもハンドパンを買って練習しようと思う」と言い、久保田リョウヘイさんとの共演も夢見ていた。
左官さんはハンドパンと出会って間もなく都内の公園などでハンドパンの体験会を開き、ネットで参加を呼びかけてハンドパンの普及を図っている。東京でやっている体験会を三条でもとなり、今回のイベントが実現した。
左官さんは「リョウヘイもほかのハンドパンプレーヤーもメディアの露出が増え、今までとは比べものにならない。全然、知らない人からハンドパンは面白いと言われるようになり、普及に少しは貢献できているのかと思う」。久保田リョウヘイさんはこの夏のフジロックフェスティバルの初出演が決まり、本人にとってもハンドパンにとっても大きなマイルストーンに到達する。
左官さんは「フェスでやるのはプロに任せて、ぼくらはぼくらで草の根運動を続けたいし、これからハンドパンを始める人の受け皿としてやっていきたい」と変わらないスタンスでハンドパンの愛好者を増やしていく。
(佐藤)