新潟県燕市国上の国上寺(こくじょうじ)(山田光哲住職・燕市国上)が、燕市文化財に指定されている本堂の外壁に今春、絵画作品「イケメン官能絵巻」を設置したのに伴って現状変更許可申請を提出し、燕市教育委員会は燕市文化財調査審議会(幸田顕委員長・委員6人)にその可否を諮問した。7月12日開かれた今年度第1回の燕市文化財調査審議会では結論が出ず、18日開かれた第2回で「不許可」と答申することを決めた。
第1回は賛否両論があって意見を集約できず散会。引き続き第2回も討論したがやはり意見をまとめられず、判断は幸田委員長に一任すると決め、幸田委員長が申請を不許可と判断し、それを審議会の結論とした。
あとで答申書をまとめ、30日開かれる定例の教育委員会で遠藤浩教育長に答申する。それをふまえて教育委員会で許可申請の可否を決定する。審議会の存在理由からしても答申通り不許可と決まると思われる。
不許可になれば国上寺に原状回復を求める。国上寺では本尊の開帳が終わる来年5月までは撤去しない方針としており、仮に市教委が不許可と決め、国上寺が原状回復をしないとなると、今度は文化財指定の解除について審議会に諮問することになり、騒動の終結はまだまだ時間がかかりそうだ。
審議会後、幸田委員長は「現在の絵の姿は、原状回復を願っているということで進めていくことになった」とし、「文化財保護法があり、文化財をどういうスタイルで守り、文化的な価値をしっかりとわたしたちが認識し、本当のいい形の姿を見てもらうこと」が大切と話した。
文化財に指定された理由は、本堂は1718年建造の江戸時代の古い建物で、鎌倉時代の古式密教寺院の構造形態をとどめ、江戸時代を反映した空間が建築上の特徴。指定当時でも周辺地域を見てもあまり見られない貴重な歴史的な建造物であり長くその姿をとどめたいと指定された。
審議会では、イケメン官能絵巻によって歴史的価値が損なわれたという判断。ただ、幸田委員長は一般論として「建築の芸術の論議はそんなに簡単に決まるような問題では決してない。(審議会が)2回、続いたのは当然と思っている。場合によっては3回、4回、5回と論議していくくらいの余裕があれば、それもまたおもしろいディスカッションになると思う」とあらためて文化財の意味を考える機会にもなると前向きなとらえ方もしていた。
イケメン官能絵巻は国上寺にゆかりのある上杉謙信、源義経、弁慶、良寛、酒呑童子が全裸に近い姿で露天風呂につかったり、竜に乗ったりする姿を描いたもので、本堂の四方の壁の外側に設置して4月19日から無料公開している。
本堂は1978年(昭和53)に「国上寺本堂 附境内地」として旧分水町文化財に指定され、分水町が燕市に合併するとそのまま燕市文化財に移行した。文化財の現状変更には現状変更許可申請書を提出して許可を得る必要があり、市教委は再三、国上寺に申請書提出を求めたがが応じないため、6月14日付けで国上寺に対し行政指導の文書を出した。
6月21日の市議会でイケメン官能絵巻を批判、現状回復などを求める一般質問があり、国上寺が現状変更許可申請書を提出したことから審議会にその可否を諮問した。
(佐藤)