手打ちそばの「そば処 山河(やまか)」(中山博貴店主・新潟県三条市大谷地)は、地元で「7.29水害」と呼ばれる大きな被害に見舞われた平成23年7月新潟・福島豪雨で崩壊した店舗を再建してからちょうど3周年になる7月29日(月)、そばのつなぎに米粉を使った新開発の仮称「米粉そば」をこの日限りの500円でふるまう。
つなぎの小麦粉とそば粉を2対8の割合で売ったそばが、二八そば。その小麦粉を米粉に代えて開発した。見た目は小麦粉を使った二八そばと区別がつかず、味もそれと言われたり、食べ比べたりしなければわからないていどの違いだが、米粉そばの方がわずかにコメの甘みやこしの強さを感じ、しっかりした印象を受ける。
もともとそば粉は下田産の「とよむすめ」で水も地元の地下水。米粉は下田産のコシヒカリを道の駅「漢学の里しただ」で製粉する。オール下田産の手打ちそばになった。
たまたま地元の農家と話していて、せっかくだから下田のそば粉と米粉を合体させたらという話になったと店主の中山博貴さん(38)は話す。「おいしくなかったらやめればいい」と軽い気持ちで試したら「うまかった」。本格的に試作を重ねた。
小麦粉はタンパク質のグルテンがつなぎの役目を果たすので、そば粉に混ぜればめんを切れずに打つのはやさしい。しかし米粉にはグルテンがない。水の含有率が高いので水加減がデリケート。「スピード勝負のようなところがあり、そば粉十割の十割そばより難しいかも」と中山さんは言う。
父賢作さん(75)が1998年にそば店を開店し、中山さんは2代目。東京で働いていた中山さんは店を継ごうと1年間、深大寺そばの店で修行し、2008年ごろUターンして家族で店で働き始めた。独学で学んだ手打ちそばを知り合いに提供し始めた矢先の11年に豪雨災害に見舞われ、五十嵐川のほとりに建つ店舗は川の水があふれて崩壊した。
豪雨当時は1歳だった長男が、中山さんのそばを打つ姿を覚えていた。「また食べたい」と言われたのがきっかけで同じ場所で再建に着手し、店舗が崩壊してから5年後の同じ日、7月29日に新店舗をオープンし、営業を再開した。
それから3周年の感謝祭の目玉となるのが、米粉そば。そばは伝統的、本格的がよしとされる世界だからか、米粉を使ったそばを売りにしている店があるとは聞かない。「下田の名物になればいいし、下田の魅力がひとつでも増えることになればうれしい」と中山さんは願っている。
いずれ米粉そばを定番メニューにしたい考えだが、今のところ時期は未定。午前11時から営業し、めんがなくなりしだい終わる。
(佐藤)