新潟県三条市が2022年オープンを目指す図書館等複合施設を設計する世界的な建築家、隈研吾さんが7月31日、三条市でワークショップと講演会を行い、市民から複合施設のあり方を考えてもらい、自身がこれまで手掛けた設計を紹介した。
隈さんは浅草文化観光センター、サントリー美術館や根津美術館など数々の有名な建築物を設計した。県内では長岡市シティホールプラザ「アオーレ長岡」内部の設計を手掛け、2016年には三条に本社を置くスノーピークとコラボレーションしてモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」を監修。2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の設計でも大きな注目を集めた。東京大学教授。
三条市の図書館等複合施設は、三条小学校跡地に建設し、図書館、鍛冶ミュージアム、科学教育センターの3つの機能を備える。実施設計者は公募型プロポーザル方式で行い、参加表明した9者のなかから隈研吾建築都市設計事務所を委託業者に選定した。
ワークショップには近隣住民やまちづくりに関心のある人、建築関係者など47人が参加。前半は「まちなかにあったらいいいもの−施設周辺を見渡して−」、後半「新施設にほしいもの」をそれぞれテーマにグループワークを行った。
講演会には255人が参加。隈さんは県民になじみのある「アオーレ」の「和」のイメージの木材を使った設計など、これまで国内外で手掛けた建築物の設計のテーマや設計の意図、背景にあるエコなどについて話した。
新国立競技場の設計では、耐久性を向上させるために五十塔に学んだひさしが重なる構造や風が吹く方向を考えて競技場を気持ちよく空気が回るよう計算。外側はデートコースにもなることも想定してロマンチックな照明を心がけたことも紹介した。
建設地の地元にあるものを積極的に使っており、「三条市はものづくりのチャンピオンのようなまち。三条にあるいろんなものを使っていきたい」とも話した。
また、ワークショップの間、別の部屋では隈さんが設計した積み木「つみき」で自由に遊べるコーナーを設けた。小学校低学年前後の子どもたちが訪れ、あっという間に用意したつみきのほとんどを使って子どもたちの背丈を超える高さに積み上げて隈さんを驚かせた。会場を訪れた国定勇人三条市長は、ものづくりのまちのDNAを子どもたちも受け継いでいるからと話したと言う。
隈さんはこれまでも数多くの図書館の設計を手掛けている。「図書館はコミュニティーの新しい核として注目され、いるいろんな新しい試みがされているが、そのなかでも今回の図書館はすごくおもしろい」と隈さん。「本とものづくりを合体させるという例は三条だからできること」で、「三条の新しい文化発信の基地」となり、「外からものづくりに関心のある人がここに来て、単に聞くだけじゃなく自分で学びたいという人たちのひとつのプラットホームになり、それから勉強し始めてものづくりの世界に入っていくとか、三条と仲良くなる入り口、玄関みたいな感じになるといい」と期待した。
今回の設計では多目的ホールを別棟として建設し、建物と建物の間を「通りドマ」として空間を設け、グラウンド部分のほとんどは駐車場とせず「グラウンドひろば」として残す。「屋外空間がすごくたくさんあるのが特徴で、ふつう公共建築ってこんなに庭がない」。仮設テントや「住箱-JYUBAKO-」などの設置も考えられ、「これだけ広ければいろいろなことができる。そこもぼくはすごく楽しみにしている」。
三条のまちについては、「随分、工場が抜けちゃってすけすけになってるけど、まだ残ってるところの雰囲気なんかもう、見に来たらみんな三条のファンになっちゃうんじゃないかと思うくらい魅力的」と指摘。この日のワークショップにより、「使う人からアイデアをもらうだけじゃなく、みんながこの施設を自分たちの施設だと感じてもらえるのがちいちばん大事。知らない人がやってきて知らないうちにできちゃったというんじゃなくて、一緒になにか作ってるという感じでやると、そのあとも自分の建物という感じで利用してもらえるのではないか。それを期待している」と市民に親しみ、愛される施設になることを願っていた。
(佐藤)