新潟県燕市の燕市総合文化センター駐車場に「水道の塔」の名で親しまれる燕市のランドマーク、旧浄水場配水塔が立つ。老朽化に伴って2011年度に大規模改修が行われたが、すぐに外壁がはがれ落ち始めた。それから7年余りたつが、いまだに抜本的な改修は行われず、部分的な補修を繰り返すにとどまっている。周辺を立ち入り禁止にしているものの人的被害が出る可能性もあり、早急な対策が望まれる。
旧浄水場配水塔は1941年(昭和16)に旧浄水場の配水施設として建設された。ずっと使われず、老朽化に伴って保存か撤去かの議論があったが、文化財的価値もあることから保存を選択。2011年度に改修工事が行われて2012年3月に竣工し、翌2013年6月21日付けで国登録有形文化財にも登録された。
改修工事の内容は、倒壊しないようにするための地盤改良が中心で、総工費約7,000万円のうち、地盤改良が約5,000万円を占めた。しかし工事が完了して間もなく上部にある歩廊の一部がはがれ落ちているのが確認され、改修工事が完了してから4カ月後の7月には早くも補修を行った。
その後も外壁のはがれ落ちは続き、翌13年7月には正面出入り口のひさしにクラックや浮き上がりが発生したたため補修。17年10月には台風による強風で一度に複数の外壁がはがれ落ちたため、手の届く範囲で打診や問題のある部分の除去を行った。
18年3月には、はがれた所に部分的なウレタン塗膜を施し、あわせて駐車場にプラスチックチェーンを張って旧浄水場配水塔の周囲、数メートル以内は立ち入り禁止にした。
そしてことし1月には、旧浄水場配水塔から10メートル以上も離れた所に駐車してあった市職員の車に外壁の破片が当たり、フロントガラスが割れる事故が発生した。
国登録有形文化財への登録に向けて旧浄水場配水塔の調査を行った長岡造形大学の平山育男教授から事故の状況を確認してもらったが、あまりにも旧浄水場配水塔から離れた場所に破片が落下しているため、風などで自然にそこまで破片が飛んだとは考えられないという結論だった。しかし念のため立ち入り禁止区域をさらに広げ、とくに東側は広く約20メートル以内を立ち入り禁止としている。
2011年度の改修工事で行った外壁の改修の目的は、落書きや汚れの防止、美観などを主眼に、ガラスコーティングを行った。改修の目的に外壁のはがれ落ち防止があったかどうかはよくわからない。外壁がはがれ落ちる主な原因は、外壁のすき間に入った水が冬期間に凍って体積が増え、膨らんで外壁を割るためと思わるが、冬期間以外もはがれ落ちている。
補修した部分は色が変わり、パッチワークのようになっている。燕市教育委員会では、外壁がはがれ落ちない工法での外壁の改修を検討しているが、具体的には決まっていない。はがれ落ちの責任が、発注者の市と、施工業者側のどちらにあるのかも明らかになっていない。
はがれ落ちた破片のほとんどは小石ていどだったと言うが、抜本的な対策が先送りされてきた感が否めず、人的被害も心配される。市教委では立ち入り禁止区域に絶対に入らないよう求めている。