2020年東京五輪で新潟県三条市をホストタウンとする東欧のコソボの柔道チームが、8月25日から都内で開かれる世界柔道選手権に出場するため20日から三条市内で事前合宿を行った。練習最終日の23日は大崎学園で練習後、三条柔道倶楽部(本間修会長)と交流した。
合宿に参加したのは、リオ五輪金メダリストで東京五輪でも女子52kg級の優勝候補の世界ランキング7位マイリンダ・ケルメンディ(Majlinda Kelmendi)選手をはじめ、女子4人と男子1人の5選手に加え、ドリトン・クカ(Driton Kuka)。三条市に到着した翌日21日から毎日、トレーニングを行って調整した。
24日朝に上京するため、23日が練習最終日。三条市立大崎学園の柔剣道場で午前10時から1時間で練習を切り上げ、三条柔道倶楽部の小中学生20人余りと交流した。相手を変えて子どもたちと順番に乱取りのあと、各選手が得意技を披露した。
子どもたちのレベルにあわせて互いに技をかけあい、最後は投げられたり、押さえ込みされたりして、子どもたちに花をもたせた。
小さな選手のあまりのかわいさに、ほっぺをなでたり、ゆるんだ柔道着のひもを結んであげたりと楽しんでいた。
会場を訪れたコソボのレオン・マラゾーグ駐日大使はあいさつで、日本よりずっと柔道人口が少ないコソボの柔道界は世界で活躍しており、選手やコーチに感謝するとともに、合宿や交流を通じてコソボと三条市とのきずなが深まったことに感謝いた。
クカコーチは子どもたちをコソボに招きたいと話した。ケルメンディは対戦した子どもたちの中から将来の五輪選手が現れるかもしれないと来たい。ケルメンディ選手は「世界中いろいろな所へ行くが、このような温かいおもてなしを受けたのは初めてで皆さんに感謝している。東京の世界選手権でも皆さんをがっかりさせることのないように全力を尽くし、支援して良かったと言ってもらえるように頑張る」
国定勇人三条市長は、世界柔道選手権では日本人のほとんどが日本選手を応援するが、それを敵に回しててでもコソボを応援すると宣言し、コソボ選手の活躍に大いに期待した。
乱取りでケルメンディ選手と技をかけあった第三中学1年池田和歳さんは「ちょっといつものふつうの選手とは比べものにならない」、「力も技をかける速さもすごかった」と言い、投げさせてもらったときは「ちょっとうれしかった」とにっこりだった。
その後、宿泊先の中小企業大学校三条校の昼食は、地元の中華料理店「華園」のカレーライスをふるまった。白倉広美店主は若いころに新潟市の中華料理店で修行したが、中華料理なのに主人の師匠はカレーライスを得意にした。
師匠は1964年の東京五輪で、インドの選手村の調理を担当し、本場のインド人から直接、カレーライスの調理を学び、白倉さんもそのレシピを受け継いだ。白倉さんの名刺には「広東料理と本場インドカリー」とある。白倉さんもいつか五輪選手に師匠直伝のカレーライスを食べてほしいと願っていた。思わぬ形でその夢がかない、涙がこみ上げて声を詰まらせていた。
このあと三条市下田地区のゲストハウス「村長の家」を見学した。コソボのジャコヴァという地域にはヨーロッパには珍しい木造家屋が連なる町並みがある。選手はジャコヴァ周辺に住んでおり、古い日本家屋をリノベーションした「村長の家」には、部屋の仕切りがなくて広いことや部屋のなかに物が少ないことなどコソボの住宅との違いに興味を示していた。
翌24日午前10時半から中小企業大学校三条校前で出発するコソボ選手団の見送りを行う。26日はケルメンディ選手を応援するため、三条市ホストタウン事業実行委員会と三条柔道倶楽部の総勢約20人がバスで上京し、世界柔道選手権会場でケルメンディ選手の試合を応援する。