新潟県の燕市と弥彦村で構成する一部事務組合「燕・弥彦総合事務組合」(管理者・鈴木力燕市長)は、管内で初めてAED(自動体外式除細動器)による救命措置を実施しにより人命救助に功績のあった映画館の社員2人に9月8日、感謝状を贈って功績をたたえた。
感謝状を受けたのはシネマコンプレックス「イオンシネマ県央」(燕市井土巻2)社員の大西光一支配人(30)と高木翔さん(34)。8日は代表して大西支配人が市役所を訪れ、鈴木市長から感謝状を受けた。
日曜の7月28日午前10時半ごろ、ごった返す2階売店前で起きた。高木さんはカウンターで商品を販売。大西支配人は後ろで作業を補助していた。
カウンターをはさんで高木さんの目の前で商品を注文して会計を待っていた26歳の女性が、なんの前ぶれもなく突然、カウンターに手をつくと、崩れるように横に倒れた。高木さんはすぐに女性のもとへ向かった。女性は意識も反応もなく、呼吸しているようすもない状態を確認。同時にトランシーバーで大西支配人を呼んだ。
高木さんは10メートルほど離れた場所に設置してあるAEDを取りに走り、同時に119番通報。大西支配人はすぐにAEDを女性に装着した。AEDは心室細動を確認して電気ショックが必要と判定したため、実施した。
続けて胸骨圧迫と人工呼吸を行い、3分後にAEDが今度は電気ショックの必要性がないと判定。心拍が正常に戻った。呼吸も再開したように感じられ、再び胸骨圧迫と人工呼吸を救急隊が到着するまで続けた。救急隊到着後に心拍が再開し意識も回復した。
女性は救急車のなかで意識が戻って話もできるまでに回復。その後、ドクターヘリで新潟市内の病院へ運ばれた。電気ショックを実施していなければ女性は亡くなっていた可能性が高く、大西支配人らの速やかで適切な応急処置、勇気ある決断と行動で女性はまさに九死に一生を得た。
映画館は年間延べ約25万人の入場者があるので当然、気分が悪くなったり、意識を失ったりする人も出てくる。「そういう方がいらっしゃることは常に想定しているし、そのときにどう対応するかも想定している」とし、全国のイオンシネマの映画館でもAEDで電気ショックを実施したのは初めてではないかと言う。
大西支配人は、7年ほど前に前任地の大阪で普通救命士の訓練を受け、AEDの操作も学んだ。しかし「日常的に使っているわけではなく、一般の人とほとんど変わらない。ただ、目の前でそういうことがあれば怖いものではなく、むしろ命を救ってくれるものなので、皆さんもちゅうちょせず使っていただければ」と言い、「ふだんからAEDのある場所を確認し、何かあったときに自分が率先して動けるような社会になっていけばいい」と願った。
鈴木市長は「こういった事例がひとつのきっかけになってAEDを学ぼうとか通報を含めて速やかに対応しようというふうに広がっていけばいい」と期待した。