新潟県三条市神明町、神明宮(三上行雄宮司)で22日を宵宮、23日を本祭に秋季大祭が行われた。祭りを締めくくる23日夜の神楽奉納は、台風17号から変わった温帯低気圧の影響で強風が吹いたため、拝殿に会場を移して短縮して行った。
三条市内の神社6社が保存する32演目の神楽舞は、1983年に新潟県指定民俗文化財に指定されている。神明宮はその6社のうちのひとつ。春と秋の大祭では、宵宮の夜と本祭の午後と夜の計3回、神楽を奉納している。
神楽を奉納するのは神明宮伶人会(笹川浩志会長)。宵宮の神楽は、いつも通り拝殿に向かって右側から廊下でつながる舞殿で舞ったが、本祭の23日は強い風が吹き、午後からの奉納はなんとか舞殿で行ったがその後、さらに風が強まって強風注意報が発表された。体をもっていかれるほど強い風が吹き、袖が広くゆったりした衣をまとっていればなおさらだ。
危険なので夜の神楽は、舞殿から拝殿に会場を移した。大雨や強風で拝殿で舞うことがあるが、ここ10年ほどでは拝殿で舞っていないと言う珍しいケース。風がさらに強くならないうちに終わると、奉納する演目も予定より2舞減らして5舞に短縮した。
強風で神楽を中止しているのではと半信半疑で訪れる人もあり、見物客は少なめだったが、もちまきのある「宝剣作」のころには、50人ほどが集まった。舞殿では見物客に向かって舞うが、神に奉納するものなので、拝殿での舞は御霊を納めた奥の神殿を正面として舞う。そのため、見物客は舞を後ろ側から見物することになる。
舞殿での神楽は、後ろ側ははやしを演奏する場所になっているので見ることができない。舞殿の舞台は背よりもずっと高くて下から仰ぎ見る形になり、拝殿からは同じ高さから見られるが、舞殿からは遠い。それが拝殿になると同じ高さで手が届きそうな間近で見物でき、舞を裏側から見る形になるとはいえ、それはそれで貴重な機会。はやしの音をかき消すほど怖いくらいに大きな風の音が響くこともあったが、見物客はいつも以上にじっくりと神楽を鑑賞していた。
演目の間には、演目の由来や「宝剣作」の舞に関連して日本刀の反りが三条で生まれたという説の紹介に聞き入り、もちまきでは舞手が見物客の間へ入っていくという舞殿ではあり得ないアドリブも。見物が少なかったこともあって、ひとり当たりのもちまきの量も多くなり、荷物になるほど菓子でぱんぱんになったビニール袋を持ち帰る子どももいた。