世界の土産用スプーンのコレクター、松浦靖(まつうら やすし)さん(83)=京都府京田辺市=の「世界のスプーン展〜スプーンで巡る世界の紋章」が10月3日から11月17日まで燕市産業史料館で開かれている。初めて燕市産業史料館でスプーン展を開いてからことしでちょうど10年の節目になり、原点回帰の展示となっている。
今回で2年ぶり6回目のスプーン展。松浦さんがスプーンを集め始めたのは同志社大学職員だった1981年。仕事でスイスのジュネーブを訪れ、レマン湖畔でオメガの時計店に立ち寄ってもらったスプーンがコレクションの「はじまりの1本」だった。スプーンの柄の先にジュネーブの歴史を伝える紋章があった。原点に立ち返る今回は、その紋章にスポットを当てた。
展示している紋章のスプーンは、約460本にもなる。地域ごとにアジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニア、北アメリカ、南アメリカと地域とまとめて展示。ヨーロッパ、なかでもイギリスが多い。ガラスケースに入れず、壁に張り付けた形で展示しているので、腰を曲げずに目を近づけてじっくりと鑑賞できる。
ほかに世界の大学の紋章と「き章」のスプーン、最近になって入手したスプーン、最近の旅で出会ったスプーンがある。大学のスプーンのなかには慶応、立教、國學院、関西学院、同志社など日本の大学もある。同志社大学のスプーンのうち1本は、松浦さんが2002年に退職したときに製作したオリジナルで、300人の教職員にプレゼントした記念のスプーンだ。
最近になって入手したスプーンは知人などをプレゼントしてくれたもの。最近の旅で出会ったスプーンは、昨年6月の古代エジプト・文明を探るスプーンの旅(エジプト、アラブ共和国)、昨年10月の南部アフリカ4カ国をめぐるスプーンの旅(南アフリカ、ジンバブエ、ザンビア、ボツワナ)、ことし6月の北欧4カ国をめぐるスプーンの旅(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)で松浦さんが入手したスプーンを展示している。
北欧の旅のスウェーデンでは、ストックホルム市庁舎を訪れ、ノーベル賞授賞式の晩さん会が行われる「青の間」を見学した。理由は、1991年から燕市の山崎金属工業が製造したカトラリーが晩さん会で使われているから。「山崎金属工業のカトラリーが使われるところを1度、見ておきたかった」と松浦さんは念願をかなえた。
帰国後、6月から7月にかけて燕市産業史料館で開かれていた山崎金属工業株式会社100周年記念展を見学。山崎悦次社長とも面会し、「喜ばれはって、1時間ぐらい話しました」とうれしそうに話す。
燕市産業史料館でのスプーン展10年の節目に「ありがたいことです。皆さんから支援、協力してもらって会場まで足を運んでもらって知り合いができた」と松浦さん。「たった一本のスプーンがわたしの人生をここまで豊かなものにしてくれた。良き教師として新たなことを教えてくれた」。スプーンコレクションの旅はまだまだ続く。
松浦さんは10月11日までと11月1日から4日までは在館する。10月6日(日)午後2時から松浦さんによる作品解説会を開く。午前9時から午後4時半まで開館し、月曜と、月曜が休祝日の場合は翌日、祝日の翌日は休館。観覧料は、おとな400円、小・中・高校生100円。問い合わせは燕市産業史料館(0256-64-7630)へ。