近年、イノシシの目撃情報が増えている新潟県燕市分水地区で10月10日朝、イノシシが現れて警察官も出動する騒ぎになった。イノシシは川幅約100メートルもある信濃川を軽々と泳いで渡りきり、姿をくらました。
同じ個体と思われるイノシシは、前日9日午4時ごろにも目撃されていた。信濃川左岸側の本川橋下流、大川津地内の土手。草の上でえさを探しているようすだった。
うわさを聞きつけて近くに10人ほどが集まったが、警戒するようすもなかった。1時間近くたってようやく、船着き場近くの漁協の池のわきの草むらに入って行き、そこで見失った。
翌10日は通報を受けて燕署が出動し、午前7時前から付近を捜索した。イノシシは前日の目撃現場に近いパナソニック新潟工場そばの民家の敷地内で落ちていたクリを食べたあと、今度は隣家でカキを食べていた。
その後、下流側の畑へ移動したあと、川の方へ向かい、信濃川を泳いで対岸の長岡市中之島地区へ渡った。そのようすを燕市農政課の職員が動画で撮影した。泳ぎは上手で、ものの1分半ほどで渡りきっている。
イノシシが食べていたカキのある家の人は、家の玄関を出て右手の道路の方に目をやると、道路を歩いているイノシシと目があった。慌てて家に戻って玄関の扉を閉めた。
「いやー、びびっくりしました。こっち見てました。おっかなかったですよ」、「何十年と見たことないですよね。つい最近、ハクビシンがそこで死んでて、それも初めてのこと」と相次ぐ獣の襲来に驚いている。
畑では、軽トラックを運転して家へ杭を取りに向かっていた79歳の男性が向かってくるイノシシと鉢合わせした。イノシシが猛スピードで走って向かってきた。「正面からダーッ!と来た」。イノシシはぶつかるのを避けて土手下に下りて「小せー馬みてらった」、「たまげた」と驚き、自治会長にも報告しなければと話していた。
燕市では近年、有害鳥獣の出没が増えている。燕市のまとめでは、それまで地元にはいないと思われていたイノシシが2017年に目撃された。その後もたびたび目撃され、ことしはいずれも分水地区で3月に目撃情報が1件あり、7月には1頭の死体を発見。8月には足跡が見つかって今回の目撃となった。
人間と遭遇しても慌てないどころか、たいして警戒しているようすもなく、慣れているよう。この地域はすでにイノシシの生活圏になっていると考えた方がよさそうだ。イノシシ年も残り2カ月を切ってイノシシが存在感を増している。
これからの対応として、燕市は地元猟友会に頼んで連休明けに箱わなを1カ所に設置する。猟友会は箱わなを1台しか保有してない。イノシシは繁殖力が高く、放っておくとどんどん増えかねない。人的被害はもちろん、畑の作物などを食い荒らす食害も心配され、警察など関係機関と連携して対策を強化する考えだ。イノシシを見かけた人は燕市生活環境課環境政策係(0256-77-8167)へ。